営業DXサービス「Sansan」を手掛けるSansan社でも、インボイス事業が急成長している。受け取った請求書を全てデジタル化して管理できるインボイス管理サービス「Bill One」だ。
Sansanの第1四半期における売上高は31.3%増加して75億円となった。うち54億円を占める主力のSansanの成長率は15.7%だが、前年同期2.9倍の11.6億円まで拡大したBill Oneの成長が、全社の成長のけん引役となっている。
大企業を中心に導入者数は1952社、1社あたりの平均月次売上高は20万7000円にのぼる。Bill Oneから定常的に生まれる売上高を示すARRは48億円を超えた。「Bill Oneは粗利率も前年同期の65%から80%に改善し、赤字額も縮小した」と同社の橋本宗之CFO。
マネーフォワード同様、11月以降に再び需要が盛り上がると橋本氏は見る。「世の中の企業がインボイス制度の対応に追われているため、10〜11月は、いったん新しいツールを導入する機運が落ち着くだろう。しかし運用してみて、手作業では無理ということから、その先は力強い需要が回復してくると見ている」(橋本CFO)
インボイス制度への対応策として好調な経理関係のSaaS業界だが、次の追い風も控えている。24年1月から対応が必要となる電子帳簿保存法だ。これは、税法で保存が義務付けられている帳簿や書類を電子データで保存するためのルールを定めたもの。22年の法改正で、電子取引における電子データ保存が義務化されたが、中小企業における負担の高さから12月31日まで猶予期間が設けられたという経緯がある。
インボイス対応のために請求書の管理を電子化した企業は、電子帳簿保存法にも対応するため帳簿や書類の管理を全て電子化していくのが自然な流れだ。「インボイス制度対応の需要は継続的に続く。電子帳簿保存法など法律変更もある。さらに根本にはDX化の流れもある」とマネーフォワードの辻社長は言う。
事業者に多大な事務負担をかけるインボイス制度だが、これを契機として、紙が中心だった経理事務のDXが、中小企業においても進みそうだ。
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