なぜこんなにいい加減だったのか。吉田社長は経営者としての慢心があったと反省をしていたが、本当に足りなかったのは「事業拡大に見合う設備投資」である。
そして、この判断ミスを招いたのは「駅弁」という呪縛ではなかったか。駅弁をうたう以上、八戸でつくらないといけない。吉田屋がそういう固定概念に縛られていたのは、Webサイトにある以下の言葉からも分かる。
「青森、そして東北から。美味しさと感動を全国へ。」
昨今、北海道フェアのような催しが全国の百貨店などで開催されているので、日本全国のものがどこでも手に入るようになった。その流れで全国の「つくりたて駅弁」もいろいろなところで食べられるようになっている。
しかし、人口減少で「物流崩壊」の危機が叫ばれるこの国で、こうした消費スタイルを続けていいのかという問題もある。海外ではカーボンニュートラルの観点から、「フードマイレージ」(食料の輸送にかかる環境負荷を数値化したもの)という運動が広がっている。日本でいうところの「地産地消」へシフトしたほうが、企業も消費者も持続可能ではないかというワケだ。
今回のような事故を繰り返さないためにも、「駅弁」とは何かということをしっかりと決めておくべきかもしれない。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング