「ふーん、それが何か?」と思うかもしれないが、ちょっと冷静に考えていただきたい。ここまで全国規模で販売される弁当は、もはや「駅弁」ではないのではないか。
駅弁とはその名の通り、駅で販売され、電車の旅をしながら食べる弁当で、その土地ならではという新鮮な食材を用いたものだ。だから、その土地で製造されて、その土地で消費されるという「地産地消」が基本だ。
しかし、物流網や冷蔵技術の発達で多少はその消費地域が広がった。だからわれわれは八戸に行かなくとも、電車に乗らなくとも、東京都内のスーパーの催事場で吉田屋の駅弁を買って食べることができた。
もちろん、これは消費者にとってはありがたい。しかし、一方で、事業者側にはかなりリスキーだ。
イオンのような大手流通企業ならば八戸で製造した「つくりたて弁当」の品質をキープしたまま日本全国で輸送・販売することも可能だろうが、吉田屋のように設備投資や人員に限界がある中小企業では難しいチャレンジだ。つまり、「身の丈に合わない事業」にのめり込むことで、現場が疲弊して致命的なミスが生まれる恐れがあるのだ。
本来、弁当という「傷みやすい調理された食事」を全国展開するのなら、各地に製造拠点をつくるのは当然だ。それをしないでローカルブランドとして勝負するのなら「品質管理」がキープできるエリアに限定するのは、食品を扱う者としては常識だろう。
分かりやすいのは「横浜名物」として知られる「崎陽軒」のシウマイ弁当だ。この有名ブランド弁当の製造拠点は、横浜工場と東京工場がある。では、ここで製造した弁当をどこで売っているのかというと、神奈川県、東京都、千葉県、埼玉県、静岡県だ。
通信販売で冷凍した弁当やシウマイなどは売っているが、「つくりたての弁当」は品質管理が及ぶ関東から静岡までしかいかない。
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