低迷期から浮上したのは、07年を過ぎたころ。チェキの売り上げが上昇し始めたが明確な理由が分からず、「なんだ、なんだ」と社内がザワついた。調べていくと、07年に放映された韓国の恋愛ドラマにチェキが登場し、若年女性の間で話題になっていることが分かった。
「当時の若年層はチェキを知らなかったので、ドラマを見て『何これ?』という反応になったと。スマホ撮影があたり前の世代からすると、それとは異なる写真のエンタメのツールとして、チェキを面白いと感じてくれたようです」
この出来事を機に、韓国を中心にグローバルでチェキの人気が再加熱し始めた。
この流れをくんで、チェキはアプローチを方向転換する。それ以前は「インスタント技術を備えたカメラ」として技術面を押し出していたが、丸みを帯びた本体にパステルカラーを施し、「世界で一番“カワイイ”インスタントカメラ」として12年に売り出した。これが功を奏し、チェキブームが再来した。
スマホで撮影して画面で見ることが標準になった時代に、なぜあえてチェキを買うのか。富士フイルムでは、チェキユーザーへのインタビューを繰り返した。すると、支持されているのはチェキ独自の世界観だと分かった。
「チェキの写真は『粒子っぽい』『独特の質感がある』と。こういった世界観が好まれているようです。さらに、プリントすると写真データが記録から作品のようになり、『宝物になる』『もっと身近に感じられる』といった声が聞かれました」
チェキで撮影するのは大切な人たちやペットであり、その写真をプリントすることで被写体との距離感が縮まるような感覚があるそうだ。プリントした写真は、部屋に飾る、人にあげるほか、最近では透明のスマホケースに入れて見えるようにして持ち運ぶ人が増えているとか。
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