国立科学博物館は、同館の標本・資料の充実のために実施していたクラウドファンディングを11月5日に締め切った。目標金額1億円に対して、約5.7万人から約9.2億円の支援金が集まった。
11月6日に同館が開いた会見で、集まった支援金のうち約3.2億円を返礼品などの「間接経費」として支出し、約6億円を「事業経費」として活用すると発表した。事業経費の内訳として、(1)同館のコレクションの充実・管理(4.4億円)、(2)他館と共同したコレクションの充実、(3)標本・資料収集意義の発信(0.6億円)の3つを挙げた。
クラウドファンディングの副次的な効果として、同館の賛助会員の数も増えていったという。個人会員の数は7月末に344人だったところ10月末には774に、団体会員の数は同期間で2762団体から2978団体に増加したとしている。
今後は継続的な支援を得る仕組みをつくる必要があるとし、海外の博物館も参考にしながら、賛助会員への寄付金額に応じたメリットの提供も検討するとした。
篠田謙一館長は、多くの支援金が集まったことについて「ほっとしている」としつつ、想定以上に多くの応援の声が届いたことについて感謝を述べた。今回のクラウドファンディングを取り巻く、ネット上のさまざまな議論についても見解を話した。
「今回のクラウドファンディングは、国立科学博物館が持つ問題を可視化したともいえる。ネット上では『国立なのに何で金がなくなるんだ』『一般の人たちに支援を募るのはおかしいのではないか』などの意見も目にした。
一方でわれわれはお金がなくて困っていて、皆さまに支援をお願いしている状態に変わりはない。理念のために死ねといわれても死ぬわけにはいかない。
さまざまな意見があるにせよ、博物館を取り巻く現実の問題について多くの人が知るところとなり、考える契機になり、議論をする場となったインターネット空間は、意外にも重要なものだと感じた」
篠田館長は今回のクラウドファンディングが、他の科学博物館が抱える問題についても多くの人が考えるきっかけになったとし、そうした効果を生んだことも成果の一つではないかと話した。
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