ハンバーガーはゼンショーの悲願? 新業態・ゼッテリアで注目すべき「価格」と「商品」長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)

» 2023年11月07日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

 ロッテリアは10月26日、新業態「ゼッテリア」の2号店を、東武スカイツリーライン・草加駅に直結する商業施設「草加ヴァリエ ヴァリエ1」の1階にオープンした。

 12月下旬には、ゆりかもめ・東京ビッグサイト駅前の商業施設「ワンザ有明」への3号店出店も決定している。1号店が好調につき、矢継ぎ早に出店を重ねているようで、順風満帆な滑り出しだ。

 ロッテリアのプレスリリースによれば、ゼッテリアの名称はメイン商品の「絶品バーガー」と、気軽に楽しめるお店という意味を込めた言葉として「カフェテリア」を組み合せたという。「絶品チーズバーガー」「絶品ミートソースバーガー」「えびバーガー」といった3つのハンバーガーと、フェアトレードのコーヒー(ホット・アイス)を売りにしている。

 ちなみに1号店である田町芝浦店は、JR・田町駅の芝浦口から歩いて3〜4分の場所にオープン。1号店の田町芝浦店、2号店の草加ヴァリエ店はともに、ロッテリアとして営業していた店舗から業態転換した。

ゼッテリア1号店の田町芝浦店(提供:ロッテリア)

ゼンショーにとって「ハンバーガー」が重要なワケ

 もともとロッテリアはロッテホールディングス(HD)の100%子会社であったが、4月1日にゼンショーHDの100%子会社であるゼンショーファストHDが全株式を取得。ゼンショーグループの傘下に入った。

 ゼンショーは、牛丼「すき家」を中核に、回転寿司「はま寿司」を自社で育成するだけでなく、数多くのM&Aを駆使して拡大してきた。うどん・丼「なか卯」、ハンバーグ・ステーキ「ビッグボーイ」、イタリアン「ジョリーパスタ」、ファミレス「ココス」、ラーメン「伝丸」などは、ゼンショーがM&Aで取得したチェーンだ。今回、ロッテリアも新しく仲間入りした。

 巧みなM&Aも奏功して、ゼンショーHDの2023年3月期における売上高は、約7800億円(前期比18.4%増)。国内外食で断トツである。

 なお、2位の日本マクドナルドHDの売上高は約3523億円(22年12月期)、3位のすかいらーくHDホールディングスは約3037億円(同)となっている。

外食チェーンとして1位の売上規模を誇るゼンショーホールディングス(出所:同社公式Webサイト)

 「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という企業理念の下、ゼンショーHDは外食世界一を目指している。外食・中食の市場調査を手掛けるエヌピーディ・ジャパン(東京都港区)のフードサービスシニアアナリスト・東さやか氏のブログによれば、日本のハンバーガーは7000億円を超える市場規模を持つ。これは牛丼の1.8倍の大きさ。しかも、コロナ前の19年に比べて22年は26%増と驚異的な成長を遂げた。

 コロナ禍の間、マクドナルドやモスバーガーの既存店売上高は、ずっと前年を上回っていた。ところが牛丼は同じ牛肉を使ったファストフードなのに、コロナ禍の期間中、3%増にとどまった。

 ハンバーガーは、テークアウト・デリバリーに強く、パンデミックの影響を珍しく受けなかった業態である。それどころか、ひとり勝ちといえるほど好調だった。

 盤石な基盤を持つゼンショーHDといえども、系列にハンバーガー業態を持たない弱みで、コロナ禍が直撃した21年3月期は、売上高が前年比5.6%減の約5950億円と厳しい結果に終わった。ポートフォリオを完成させるためには、ぜひともハンバーガーは欲しい業態だったのではないだろうか。

 しかも、国内ハンバーガーでトップブランドのマクドナルドは、世界の外食企業としてももスターバックスに次ぐ、第2位の企業。ハンバーガーは商材として世界に浸透しており、ビジネスとしてもまだまだ成長する可能性を秘めているのだ。

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