ハンバーガーはゼンショーの悲願? 新業態・ゼッテリアで注目すべき「価格」と「商品」長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)

» 2023年11月07日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

 ロッテリアの店舗数は、23年1月1日時点で日本全国に358店舗。近年はヒット商品に恵まれない感があったが、それでも国内4位と有力なハンバーガーチェーンの一つだ。ゼンショーHDによると、食材調達・物流・店舗運営ノウハウなどのシナジー効果が見込めると判断して、株式取得を決定した。

苦戦気味だったロッテリア(撮影:筆者)

 4月以降はロッテリアに関して大きな変更を行っていたように見えなかったが、水面下で新しいハンバーガーショップの在り方を研究していたようだ。それがゼッテリアという新業態に結実した。

 ゼッテリアでメインの絶品バーガーには、外見からして際立った特徴がある。コッペパンのような縦長でふんわりした食感のバンズは、給食で食べたパンのようでもあり、どこか懐かしさを感じる。日本の食文化の文脈で生まれたハンバーガーといったたたずまいだ。

 どうして縦長のハンバーガーなのか。ロッテリア広報は「コロナでハンバーガーのテークアウト・デリバリーがより一層増えた。縦長の方がワンハンドで持ちやすく、食べやすい」と説明する。つまり、食べやすさを考慮した設計なのである。

他チェーンとの価格差はどう受け止められるか

 絶品バーガーのアイテムは現時点で7種類。チーズ・てりやき・ミートソースが単品390円、セット(ポテトM+ドリンクM)は690円。オレンジチキンが単品420円、セット720円だ。バンズを間に挟んでパティが2段になったグランチーズ・グランてりやき・グランミートソースは単品490円、セット790円となっている。

690円の絶品チーズバーガーセット(提供:ロッテリア)

 ポイントは、レギュラーメニューとグランメニューの値段が、単品・セットともに100円しか違わないことだろう。空腹を満たしたい人などは、気軽にグランメニューを注文するのではないか。

絶品ミートソースバーガーセット。こちらも690円(同前)

 競合として想定されるマクドナルドのビッグマックは、単品450円から。セット(ポテトMなど6種類から選択+ドリンクMが選択可能)は750円からとなっている。最近のマクドナルドは都心・準都心などで価格を変えている。ビッグマックであれば、単品だと都心・特殊立地店が500円、準都心店は470円、通常店であれば450円だ。

 ゼッテリア田町芝浦店の立地は都心店と考えれば、グランチーズなど3品の方がビッグマックよりも、10円安いということになる。また、草加ヴァリエ店は埼玉県内のベッドタウンに位置している。通常店に相当し、逆に40円高くなる。さらに、12月にオープン予定の有明店は、準都心店に相当するだろう。こちらもマクドナルドと比較して20円高くなる。

 既に首都圏で出店している3店(予定を含む)は、それぞれ田町芝浦店がオフィス街で高所得なタワマン住人が住む都心店、有明店がオフィスとイベント会場という一種の観光地が混交した準都心店。また、草加ヴァリエ店は郊外駅前・駅ナカの通常店の立ち位置といえる。極めて戦略的に顧客層が異なる場所に出店して、強大なライバル店とどれだけ戦えるか――売れ行きを見極めようとしているのではないか。

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