ゼンショーにしてみれば、今回で2度目のハンバーガーチェーンの経営となる。1度目は、02年のダイエー経営危機による子会社整理で、ビッグボーイと共にウェンディーズを展開する日本法人、ウェンコ・ジャパンを買収した。しかし、09年に米国の本部との契約を延長しなかったので、71店あった国内のウェンディーズは、いったん全店閉店した。
一方、日本の外食の歴史をひもとくと、ハンバーガー黎明期の1970年代には、ロッテのロッテリアだけでなく、明治の「サンテオレ」、森永製菓の「森永ラブ」、雪印乳業の「スノーピア」、江崎グリコの「グリコア」といった、菓子・乳業メーカーのハンバーガーショップが乱立した。ロッテリア以外は、サンテオレが2店を残すのみで、しかも明治の経営では既になくなっている。そのロッテリアまでもが、ゼンショーに売却されるとは、一抹の寂しさを覚える。
ロッテ側の事情としては、22年度の国内連結売上高は2820億円となったが、そのうち約3分の2に相当する2116億円を菓子が占めている。しかも、その菓子のうち、ガムの国内シェアは64.8%と断然の1位だ。
日本チューインガム協会の統計によれば、日本のガムの販売額は小売ベースで04年の1881億円をピークに下降線をたどり、コロナ前の19年には約半分の930億円にまで縮小した。コロナの期間中にはさらに売れ行きが鈍り、22年には710億円と19年比で約3分の2に落ち込んだ。ロッテとしては本業の不振が、ロッテリアの売却を決断させた大きな要因となっているだろう。
ロッテリアもズルズルと衰退していた。1991年7月に発行された『「モスバーガー」経営の味』(高頭弘二著、ダイヤモンド社)によれば、1990年4月時点におけるロッテリアの店舗数は647店で、マクドナルドの713店とそれほど離れていなかった。モスバーガーは915店だった。
ところが、2023年1月には、ロッテリア358店と半数強にまで激減しているのに対して、23年9月のマクドナルドは2970店、モスバーガーは1294店と大きく水を開けられた。
これまでロッテリアは駅前を中心に出店してきたが、ゼンショーが得意な郊外ロードサイドで、すき家、はま寿司、ビッグボーイなどと、どのようなシナジー効果を生んでいくだろうか。
ゼッテリアは、かつての輝きを取り戻せるのか。今後の発展が楽しみなハンバーガーの新星である。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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