データの活用はなぜ進まないのでしょうか。
「数字、数学にアレルギーがある」「分析しようにも何から手を付けたらよいか分からない」「難しいと決めつけている」など、いろいろ出てきそうですが、一言でいうと「分からないから」ではないでしょうか。
ということは、営業組織のマネジメント側がなすべきことは「分からない」の撲滅であり、「分かる」ための支援だということです。データを用いた営業活動はどのように役立つのかの基本的な理解を持たせ、事例やケーススタディを通して、データを用いることで得られる成功例を示すことが大切です。
データに苦手意識のある営業マンにぜひ知ってほしいことは、「数字はただの記号」だということです。恐れる必要はありません。数字は他の数字と比べた時に初めて意味を持ちます。そしてデータの活用はその比較パターンを持ち、行動を変えるための材料にするということです。
この後のステップの前段階において、このマインドチェンジが不可欠であり、苦手意識があるままでは各ステップにおいてスムーズな遷移はあり得ません。
Step0にてデータに対するマインドチェンジをしていただきましたので、続いては以下の3つのステップを踏んでいきましょう。
Step1:基本的なデータの読み方を学ぶ
第一段階は、データの読み方を学ぶことです。売り上げや成約率といった各数字の比較をし、顧客や自社、市場のデータを読解する「方法」を教育します。この際には、Excelや各種ツール(SFAやCRMなど)の基本的な使い方の習熟度も一定まで引き上げておくことが重要となります。
加えて、数字の変化に影響を与える「外的要因」の存在も理解してもらう必要があります。一例ですが、下記のような情報は常に把握しておく必要があるでしょう。
【市場】COVID-19の影響、戦争状況など
【競合】類似商材のリリース、競合商品の値下げなど
【商品/販促】テレビCM放映、割引キャンペーン実施状況、各種広告、ウェビナー、プレスリリースなど
【その他】営業日数(3月歓送迎会、5月GW、8月お盆、12月年末など)、人員増減など
Step2:アクションプランの策定
データを読めるようになったら次の第二段階に移ります。そのデータをいかに活用するか、つまりいかに行動につなげるかが次のポイントです。
読み取ったデータを活用した具体的な営業活動の計画や戦略を立てる方法を伝えます。データに基づく意思決定の重要性と具体的な手段を理解してもらいます。
この段階においては個人で立てる計画もあれば、組織としてのワンサイズ大きなものも必要となります。
Step3:フィードバックと改善
ここまでで半分です。Step2で実際の営業活動を通してまた新たなデータが生まれます。データ活用、営業活動の結果を振り返り、何が良かったか、何が改善されるべきかを考察します。また、考察する際に「絶対評価」と「相対評価」の両側面からアプローチすることも忘れてはいけません。
定期的なレビューやフィードバックセッションの場を設け、継続的な学びと成長を促します。既に上手に活用ができる上司との壁打ちなどは、この段階において非常に有効な育成手段となります。
最後に、最も重要なことをお伝えします。「一度教えただけで終わらない」ということを忘れないでください。
人が育たない大きな理由の一つは、育成を点で捉えてしまうことです。教わった情報にいつでもアクセスできること、そしてその情報が常に最新で更新される仕組みがあることが今回のテーマにおいては最も重要なのです。
私の所属する組織では「マニュアル」を細部にわたるまで細かく作成しています。細かさの基準は「新人営業マンが読んで行動に移せるかどうか」です。
マニュアルは社内イントラネット上に公開され、社員であれば誰でもアクセスでき、インデックスから手軽にアクセスできる環境を構築しています。私の組織の例ですが、こういった仕組みづくりこそが重要なのです。
今回は「データを読み、使える営業」を育てるための3つのステップについて解説してきましたが、孫氏が語るように、現代はデータの活用どころではない時代になってきました。AIをいかに活用できるかで、組織も個人も大きく差が生まれる時代です。どんな時代も変化に対応できない種は絶滅の一途をたどります。それは歴史が証明してきました。個人も組織も変化するなら、今しかありません。今回の記事がみなさまの変化の一助となることを心から願います。
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