既存店の売り上げは通期では2.7%増と微増ながらも、厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ政策」が転換された1月以降には好調に転じた模様で、下期の既存店売り上げは21.8%増と大きな伸びを見せており好調です。
下期に絞れば、全店売り上げでは46.6%増、営業利益が38.6%増と非常に大きな成長を見せています。
さらに中国大陸では、下期の販管費率が3.0%減と改善をみせています。一昨年並みの水準に戻っており、売り上げが回復する中でコスト面も適正化が進み好調でした。中国大陸では景気鈍化の懸念が大きく、今後の不透明感は一定程度あります。しかし行動制限明け以降の業績の回復が大きく、今後も好調が期待できそうです。
一方で不調だった国内事業では、通期の既存店売上は客数が6.8%減、客単価が3.6%増で全体で3.5%減という状況で、集客面で非常に苦戦しました。
販管費のうち宣伝費は前期比62.6%増の91億円と大きく増やしていますが、それでも客数は減少しています。
とはいえ、国内事業も下期を見てみると、価格改定の影響による粗利の改善が大きかったとしており、下期の売上は11.1%増、営業利益は16.7%増で増収増益となっています。
第4四半期単体での既存店売り上げは客数は6.4%減と苦戦が続くものの、客単価は12.1%増と大きく増加し、5.0%増となっています。苦戦していた国内事業も値上げによって改善の兆しが見え始めており、一定の業績回復が期待できる状況だと考えられます。
東アジアも国内も、下期にかけて業績の改善を見込んでいる状況です。とはいえ、国内は客数の減少が続いており、集客の重要性の高さは間違いありません。そんな中で良品計画が取り組んでいるのが個店経営です。地域密着型の事業モデルを作ることで、収益性の確保を目指しています。
近年の良品計画では、都心部の店舗が特に苦戦しており、コロナ禍で都心部の無印良品に「買い物に行く」習慣が減少した影響を受けています。
このため、例えば食品スーパーの隣に位置する、消費者にとって生活圏内の店舗では、これに応じたラインアップとしています。立地によって「買い物に出かける場所」から「生活の一部」へ転換を進めているのです。
そんな中で、コロナ禍前の業績と比べて明らかに売り上げが増加しているのが食品です。食品の販売は来店頻度の上昇につながるため、生活圏の店舗では積極的に展開し、生活の一部へ組み込んでもらおうという狙いが見えます。
一方で、都心型店舗である新宿靖国通り店は、衣類特化型店としてリニューアルをしています。生活圏としての利用よりも、買い物に出向く人のほうが多い新宿という立地では「買い物に出掛ける場所」として特化していこうとしており、ここにも立地に応じた戦略が見えます。このような取り組みを通じ、集客面を回復させられるかが注目されます。
24年8月期の通期計画を見ていくと、大幅な増収増益で、売り上げと営業利益で過去最高の業績を見込んでいます。
店舗数は増加を続けている上、海外市場は中国大陸の回復があり好調でした。さらに国内も値上げによって下期の業績は改善傾向であり、好況が続く見通しを持っているようです。
セグメント別では全市場で増収増益を見込んでおり、特に国内事業は伸びると踏んでいます。売り上げは10.1%増、営業利益は44.9%増です。こちらの計画達成は、やはり国内での集客にかかっています。
また、人員体制が強化され事業のベースが整ったとしており、さらなる投資に積極的な姿勢がうかがえます。
実際に出店計画を見ても、24年8月期も143店舗増で計1331店舗となる見込みです。国内や中国での積極出店を継続するほか、東南アジアでも積極的に出店を進めていくとしており、積極投資の姿勢を示しています。
積極出店でも集客を維持できれば、増店による成長が期待できます。やはりポイントは集客面の課題です。
良品計画は、日本と中国大陸を中心とした東アジア事業を主力市場として事業を展開しています。
近年は原燃料高や物流費の高騰が進む中、高品質のイメージで成長してきており、高単価の実現できている東アジア事業は堅調でした。一方で国内事業は業績悪化が目立つ状況でした。
直近の23年8月期では東アジア事業は行動制限の撤廃、国内では価格改定によって、下期から業績が改善しています。
中国では景気鈍化の懸念があり、また国内では集客の苦戦が目立つ状況です。一定の不透明感はあるものの、基本的には堅調な業績が期待できる状況だと考えられます。
そんな中で、取り組んでいるのが個店経営による集客の改善で、立地ごとに大きく戦略を転換していっています。出店には積極的な姿勢を見せており、業績回復のカギは集客にあります。
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