「信者ビジネス」は嫌われているのに、なぜイケてる企業は“テキトーな名前”をつけるのかスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2023年11月14日 11時38分 公開
[窪田順生ITmedia]

「信者をつくる」という手法

 フジテレビが、ホスト被害者支援をする団体から新人ホストの研修マニュアルを入手した。そこには、赤字で『マインドコントロール「鎖をかける」』という文字が記されて、『他店に行けなくする。「好きな担当がいるのに他店に行く女の子ってなんなんだろうね」と姫に言う。』という具体的なトーク術まで紹介されている。

 『これは、「地雷をおく」というテクニックで、客の女性との会話の際に、暗に自らの「嫌いな女性像」を伝えることで、女性の行動を制限し、理想の女性に仕立てていくというもの』(FNNプライムオンライン 11月8日)

 さて、このような話を聞くと「若い女性を洗脳してカルト信者のようにするホストクラブなど、さっさとぶっつぶしてしまえ」と怒りが爆発する方も多いだろう。ただ、ホストの皆さんを擁護するわけではないが、怒りにまかせて、なんでもかんでもマインドコントロール扱いで、ぶっつぶせ、規制せよというのはやめたほうがいい。

 この程度のセールストークをマインドコントロールにしてしまったら、キャバクラや高級ラウンジも当然あてはまるし、マルチ商法や健康食品・健康器具メーカー、さらには地下アイドルなどの推しビジネス、パチンコや競馬などのギャンブルや投資ビジネスなどありとありとあらゆる業種に「洗脳の被害者」がいることになる。

 つまり、「家庭が崩壊した」とか「破産した」という極端な被害事例をかき集めて「マインドコントロール」を主張すれば、どんな業界や組織も行政や弁護士団体の思うままに規制・解体ができる世の中になってしまうのだ。

 「そんなのは貴様の強引なこじつけだ」と冷笑するかもしれないが、ネットやSNSをご覧になっていただきたい。「トヨタ信者」「アイフォーン信者」「アムウェイ信者」「ニュースキン信者」「オーガニック信者」「糖質制限信者」「ビットコイン信者」「地下アイドル信者」などという言葉が当たり前のように飛び交っている。

 これは「たまたま」「偶然」ではない。成功をおさめている企業の多くは「信者ビジネス」の手法を導入している。先ほどの新人ホストの研修にあった「鎖をかける」なんてテクニックも、イケてる企業の営業・マーケティングの現場で当たり前のように使われる基本中の基本なのだ。

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