「信者ビジネス」は嫌われているのに、なぜイケてる企業は“テキトーな名前”をつけるのかスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2023年11月14日 11時38分 公開
[窪田順生ITmedia]

どこの業界、どの業種でも叩けてしまう

 そこに加えて「なんでもかんでもマインドコントロール」の風潮が危険なのは、政治利用されることだ。例えば、反政府運動をしているような人々がマスコミと組んで、現政権と近い企業・団体に対して「あそこは洗脳商法をしている反社会的団体だ」とネガティブキャンペーンを展開することも可能だ。

 先ほどから申し上げているようにカルトブランディングは、あらゆる業界・業種で導入されているので、「マインドコントロールでだまされた被害者」さえかき集めれば、どこの業界、どの業種でも叩けてしまう。

 例えば、健康食品は「体にいい」「健康になった」とかうたうことから「○○教」なんて言葉がよく聞かれる典型的なカルトブランディングなので狙われる危険性が高い。

 「健康になると言われて、それを信じて今日まで食べてきたが、病気になって裏切られた。被害回復をしろ」と騒ぐ人がいたとしよう。これまでだったら「モンスタークレーマー」で片付けられたが、この人が「セミナーに出席してマインドコントロールされた」なんて訴えたらどうか。弁護士や消費者庁は鬼の首を取ったかのように、「マインドコントロールで正常な判断力を奪っていた」とかなんとか主張して、反社会的だと糾弾する。

 そして、この健康食品企業と近しい政府関係者や閣僚に対して「反社会的な企業だと知らなかったのか」「なぜ会合に出席したのか」「辞任せよ」などと批判を広げることもできる。

 ただ、この「なんでもかんでもマインドコントロール社会」の本当に恐ろしいところは別にある。それは「人間というのは自分の頭で物事を考えて、自分の意志で行動をする」ことを全否定していることだ。

 これは冷静に考えると恐ろしい。マインドコントロールというカードさえ持ち出せば、どれだけ大金を注ぎ込もうとも、高級品を購入しようとも「誰かに操られていて、自分の意志ではない」という言い訳が成立してしまうからだ。「バカバカしい」と思うだろうが、実は既に政府がこのように考え方に「お墨付き」を与えている。

 今の日本社会は旧統一教会問題がブレークしたことで、マインドコントロールのハードルがガクンと下がって猫も杓子もマインドコントロールだ。この問題を追及する弁護士らによれば、旧統一教会の信者は日本トップの田中富広会長を筆頭に全信者が100%マインドコントロールされた「被害者」ということで、韓国の韓鶴子氏にロボットのように操られて、霊感商法など反社会的行為をやらされているという。

 もちろん、教団側や現役信者は「マインドコントロールじゃなくて信仰です」「他の宗教のように信教の自由を認めて」と反論するが、反論すればするほど、弁護士先生たちは「ご覧なさい、ちっとも反省していない。かなり重度のマインドコントロールです」とピシャリ。この「哀れな被害者たち」の洗脳を解くためにも教団の解散命令をすべきだと主張して、政府もそのロジックを受け入れたので、政治判断で「解散命令請求」を下したのである。

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