熊本大、「アニサキス殺虫装置」普及でクラファン開始 “刺身の天敵”、1億ワットで瞬殺最終目標は1600万円

» 2023年11月16日 14時56分 公開
[ITmedia]

 熊本大学が“刺身の天敵”アニサキスを除去する「アニサキス殺虫装置」の普及に向け、クラウドファンディングを始めた。1口3000円から寄付を募っており、最終的に1600万円の資金獲得を目指す。

photo クラファンページ

 アニサキスはサバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生する寄生虫の1種。食中毒を引き起こす一因になっていることから、刺身など生食用食品にとって天敵となっている。

 アニサキスを原因とする食中毒が発生した場合、各保健所はその店舗に対し、食品衛生法に基づき営業停止処分を下すことができる。一方で食中毒を引き起こした水産加工業者の中には卸先との取引を停止になり、月間取引額が5000万円減少したケースもあるなど、アニサキス対策は喫緊の課題ともなっている。

 現在、多くの事業者は食中毒防止のため、直径1mm長さ2cmほどの小さなアニサキスを手作業で取り除いているが、加熱や冷凍以外に有効な手段がなく、手間がかかることから、将来的に生の刺身の提供ができなくなる可能性がある。

photo 手作業で除去することも

 こうした背景から熊本大学は水産加工メーカーのジャパンシーフーズ(福岡市)や国立感染症研究所の研究員らとともに、アジに1億ワット(100MW)とされる巨大電力「パルスパワー」を当て、殺虫する世界初のシステムを開発した。

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 ただ、高価な装置のため、社会実装へのハードルが高いのが実情だ。クラファン実施で、商品化に向けたサプライヤーとなるメーカーを探し、サバやサンマ、サーモンなど他の魚類での活用も模索する。

photo 資金獲得の流れ

 熊本大産業ナノマテリアル研究所の浪平隆男准教授は「クラウドファンディングでの賛同によって社会実装を加速させることができる。将来的にはアニサキス以外の魚介類寄生虫の殺虫や、魚介類以外の寄生虫にも本技術が活用できないか模索していくことを計画している。この技術の発展が日本のさまざまな生食文化の未来を救うと信じている」としている。

 クラファンは12月26日午後11時まで募集中。記事公開時点(11月16日午後3時)では総額662万8000円の寄付が集まっている。

photo 刺身のイメージ

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