HR Design +

採用から定着までを成功させるにはどうする? HRの専門家が語るポイント会社全体で考える「人的資本」(1/2 ページ)

» 2023年11月21日 07時00分 公開
[古田勝久ITmedia]

 ITmedia ビジネスオンラインでは、2023年12月5〜6日に人事向けオンラインイベント「HR Design Days 2023冬」を開催する。「企業成長のカギは『人』人材戦略の最適解」をテーマに、「人材育成」「組織改革術」について有識者や実践企業の担当者が登壇する予定だ。

 本記事では、同イベントに登壇するタナベコンサルティング エグゼクティブパートナー 古田勝久氏に、人的資源経営成功に向けた“戦略人事”のノウハウについて解説してもらった。

人的資本のポートフォリオを描く

 前編「『人材を確保できないのは、求める要件が高いから』 じゃあ企業は何をすべき? 担当者が今すぐ考えるべき基本の“き”」では、人的資本の調達(採用・育成)について考えてきた。ここからは「採用→育成→活躍→定着」の流れを成功させるために取り入れてほしいことを紹介したい。それが、人的資本のポートフォリオを描くことだ。

 事業戦略を検討する際、多くの企業が事業ポートフォリオを描くだろう。それと同じように、どのような人材が必要かポートフォリオを描き、人材の質をマネジメントすることが必要である。

人的資本 (画像提供:ゲッティイメージズ)

 縦軸、横軸に異なる観点を設定して、4マスもしくは9マスのマトリックスをつくり、求めるコンピテンシー(行動特性)やスキルをマッピングしていくことでポートフォリオをつくっていただきたい。その際に気を付けてほしいことが2点ある。

 1点目は、経営者だけではなく、現場責任者や人事責任者なども議論に加わること。短期的な視点から求めるコンピテンシー・スキルなのか、将来的に必要となるものなのか、立場が異なれば想像している時間軸や活躍している姿も違うはずだ。

 本ポートフォリオでは、あくまでも“中長期的な企業価値の向上”という目的に沿って、自社の理念やパーパスに沿った事業戦略を前提にした議論を心掛けてほしい。

 2点目は人材に優劣をつけないこと。マトリックスをつくると、往々にして「右上が優れている」と思いがちだ。しかし人的資本のポートフォリオは、求めるコンピテンシー(行動特性)やスキルをマッピングしているだけであり、そこに優劣をつけるためのものではない。

 右上のマスほど人材の希少性は高くなるが、既存事業を成長拡大させたいのか、新規事業で新しい収益の柱をつくりたいのかなど、自社の中長期的なビジネスの方向性に照らし合わせたとき、どのコンピテンシー・スキルが求められるのかをしっかり見極めてほしい。そのうえで、人材の質と量の計画を立て、採用や育成の目指すべき方向性や具体的な戦略を立案してもらいたい。

 なお、人材ポートフォリオについては「人材版伊藤レポート2.0」の中で、人的資本経営の枠組みの重要な要素として挙げられている。

人的資本 人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素(経済産業省:人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 〜 人材版伊藤レポート2.0〜より )

 ここで注意すべきは、人材版伊藤レポート2.0で「動的な人材ポートフォリオ」と記されている点である。人材ポートフォリオは一度作成して終わりではない。環境変化が激しい現代においては、人材マネジメントを柔軟かつ機動的に行い、短期間で人材ポートフォリオを実現する採用→育成→活躍→定着というサイクルを回すことが必須だ。しかし、人的資本は人間であり、短期間でポートフォリオに沿った人材に変われない。だからこそ戦略的かつよりダイレクトにアプローチできる採用や育成を実現させなければならない。採用、育成はまさに人的資本経営の根幹なのだ。

人的資本
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.