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生成AIで企業はどう変わるのか オラクル「NetSuite」が提唱する新時代のERP社長が力説(1/2 ページ)

» 2023年11月21日 06時00分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

 日本オラクルが生成AIの活用に本腰を入れる。主に中小企業向けに展開するクラウドソフト「Oracle NetSuite(オラクルネットスイート)」全体に生成AIを組み込み、生産性向上の支援に注力する。

 11月13日に開いたNetSuiteに関する発表会で、同社の三澤智光社長が明らかにした。NetSuiteは会計から財務管理、顧客管理、在庫管理、人事管理、カスタマーサポートまで可能な単一のクラウド上のソフトだ。こうしたソフトは「ERP(企業資源計画)パッケージ」と呼ばれ、NetSuiteは世界で219カ国以上、3万7000社以上の企業が採用し、27カ国語に対応している。

 特に米国ではIPOしたテクノロジー系スタートアップの約6割がNetSuiteを導入済みで、生成AI系のスタートアップでも過半数がNetSuiteを導入しているという。三澤社長がNetSuiteの強みを力説した。

photo 日本オラクルの三澤智光社長

オラクル社長「AIがこの数年で世界を大きく変える」

 「一般的なERPは、SCM(サプライチェーンマネジメント)やHCM(人的資本管理)がそれぞれ独立していて、これらを横に統合しようとすると多大なコストが掛かってしまう。この点『NetSuite』は、中小規模の企業に適合しやいよう、最初から全て統合したモジュールでデザインしています」(三澤社長)

 大企業の場合は組織の規模が大きく、経営部門や財務部門、製造部門や販売部門、人事部門などが独立していることが多い。そのため、これらの部門内で運用するソフトも独立したものが求められる。

 「ところが中小企業になると、そこまで十分な体制をお客さまサイドで築くことが難しい。そのため統合化されたモジュールの特徴を生かして、より早く簡単に導入を可能にしているのが『NetSuite』の大きな特徴です。いずれにしてもわれわれのアプリケーション戦略は、『大は小を兼ねない』という戦略で展開しています」(三澤社長)

 また、従来のERPはそれぞれのサーバごとにインストールする仕組みであったため、WindowsやLinux、UNIXといったOSごとの対応が必要だった。

 クラウド上のサーバで運用している場合でもMicrosoft AzureやAWS(Amazon Web Services)、Google Cloud Platformといったクラウドインフラごとに異なる対応をする必要があった。

 こうした構造の場合、パッチを当てたり、アップグレードしたりする作業が煩雑になる。そのため5年に1度などのシステム更改の際に、初期導入時と同じようなコストがかかってしまう問題点があった。

 「われわれはそれを変えていきたい思いでNetSuiteを展開しています。NetSuiteは完全にクラウドネイティブのアーキテクチャであるため、皆さまがお持ちのiPhoneが自動的にアップグレードされるのと同様、半期に1回アップグレードできる構造を持っています」(三澤社長)

 逐次アップグレードすることで、セキュリティリスクも軽減できる。パフォーマンスに問題が生じた場合でも、アップグレードによる解決が可能だ。そして、今回発表した最新のアップグレードによってNetSuiteに新たな機能を実装する。生成AIだ。

 三澤社長がこう訴える。

 「過去10年間、こうした業務アプリケーションはあまり大きな進化がなかった市場だと思います。AIが、これからの数年で業務アプリケーションの世界を本当に大きく変えていきます。業務アプリケーションそのものを進化させていくAIを適宜取り入れていくには、この単一のアーキテクチャや単一のクラウドで動いている仕組みが必須になります」

photo NetSuiteの広がり

 例えばChatGPTは基本的にネット上だけで動作するため、週単位でアップデートがかかってもユーザーは即座にそれを体験できる。NetSuiteもこれと同じような感覚で定期的に更新がかかるため、生成AIの日々の進化に追随していくことが可能だ。

 「これからはカットオーバー(新しく開発されたシステムが稼働すること)がゴールではなく、カットオーバーが始まりという世界が業務アプリケーションでは一般化していきます。こういった世界観を日本のアプリケーション市場に大企業から中小企業まで投入していきたいと思います」(三澤社長)

 オラクルはNetSuiteを日本でどのように展開するのか。日本オラクルでNetSuite事業統括カントリーマネージャー(CM)を務める渋谷由貴バイスプレジデントはこう説明する。

 「ERPといえば、そのコストや導入の難易度、複雑性から大企業向けのソリューションと考えられていることが多かった。ですがリソースプランニングが必要なのは日本の99%を占める中小企業だと言えます」

photo 日本オラクルでNetSuite事業統括カントリーマネージャーを務める渋谷由貴さん
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