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「部下なし管理職」の給与は、どう定めるのが適正か?(1/2 ページ)

» 2023年11月21日 14時50分 公開

 業務内容を給与にひも付ける「職務給」。その導入状況を見ると、全社員に職務給を導入する企業と管理職層だけに導入する企業とに分かれます。そして、一般社員層だけに職務給を導入する企業はありません。どうやら企業の職務給導入目的は「管理職層をどうにかしたい」というところにありそうです。

 「管理職層」に位置付けられている人は狭義の管理職、つまり、組織図に記載されている公式組織の長(組織長)だけではありません。たいていは非組織長も含まれています。

 職能資格制度(能力主義の等級制度)を採用している場合、組織長を務める能力があると認定された人は「昇格先行」で組織長ポジションがなくても管理職層に昇格します。また、非組織長の中には管理職相当の処遇がふさわしい専門職もいますが、そうとはいえない人も混ざっています。

 「職能資格に降格なし」というように、職能資格制度は基本的に降格運用をしないので、組織長ポジションを外れた人や「昔は優秀だったんだけれど、今は……」という人も一般社員層には戻らず、管理職層のままです。そのため、仮に昇格審査を厳格に行っていたとしても、いずれ年功化してしまうのです。

多くの企業では、どう対処している?

 管理職層の「組織長:管理職相当の処遇がふさわしい専門職:どちらでもない人」の比率を見ると、組織長以外の人の方が多いこともあります。そして、等級が同じであれば、組織長も専門職もどちらでもない人も、基本給はみんな似たり寄ったりで、役職手当で少し差がつくだけということが珍しくありません。

 仕事の責任と貢献度はたいてい組織長のほうが大きいので、まずは管理職層の人たちの役割や責任を明らかにして、給与をそれに応じた形にしたいと考える企業が多いわけです。これが、企業の職務給導入に当たっての大きな動機になっていると見てよさそうです。

photo (図表1)職能給と職務給の処遇差別化対象の違い

 図表1をご確認ください。「マネジメント職」および「プロフェッショナル職」は、多くの企業の人事制度で使われている用語で、両者を合わせたものが管理職層です。

 マネジメント職は、課長や部長など管理職層の組織長です。企業によっては課長代理などの組織長補佐が含まれていることがあります。プロフェッショナル職は、管理職層の非組織長です。基本的には専門職ですが、実態としては、どちらでもない人が含まれていることもあります。

 「職能給」の世界では、管理職層と一般社員層の社員に給与差をつけることに優先順位がありました。管理職層、つまり具体的な担当職務もさることながら「経営側の視点で仕事に取り組む人」を明確にして厚遇しようという考え方だといえます。

 それに対して職務給の世界は、まず、マネジメント職とそれ以外の人を区分しようとしています。経営側の視点で仕事に取り組む能力やスタンスではなく「実際に組織長としてマネジメントを担当している人」を明確に区分して厚遇する考え方です。「実際に○○という仕事を担当している人」という切り口が職務給の特徴です。これまで同じような職能給をもらっていた組織長と専門職、どちらでもない人の給与に差がつきます。

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