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総合職も「仕事によって給与を変える」べき? 誤解だらけの「職務給」3つのタイプ(1/2 ページ)

» 2023年11月09日 07時00分 公開

 業務内容を給与にひも付ける「職務給」への関心が高まっており、導入を検討する企業が増えています。しかし、メディアで極端な事例ばかりが取り上げられがちなせいか、人事部や経営者にも日本における職務給導入企業の実態があまり正確に伝わっていません。ましてや、多くのビジネスパーソンが抱くイメージは誤解だらけだと言ってよさそうです。

 例えば「ジョブ型を導入すると解雇しやすくなる/されやすくなる」と思っていませんか? また「職種や担当業務が変わると給料が変わる/職種や担当業務が変わらないと給料が変わらない」と思っていませんか?

誤解だらけの「職務給」 その3つのタイプ

 解雇については、ジョブ型であろうがなかろうが同じです。無期雇用のいわゆる正社員の人は、ジョブ型や職務給が導入されてもこれまで通り定年まで、そして基本的には本人が希望すれば定年後も65歳までは勤務し続けられます。これは「雇用」の話で、法律で定められているルールが存在します。ジョブ型だからといって、別のルールが適用されるわけではありません。

 しかし、職務給については雇用の話ではなく「人材マネジメント」および「人事制度」の話です。各企業がそれぞれの状況と考え方に基づき、かなりの裁量を持って制度を作り、運用しています。

 職務給について注目すべきは「無期雇用の総合職の基本給」です。

 嘱託社員やパートタイマー、アルバイトなど有期雇用の従業員は大抵の場合、従事する仕事を想定した上で雇用されており、すでにジョブ型雇用が一般的だと言えます。また、無期雇用のいわゆる正社員も、総合職以外のコース別人事制度を設けている企業は少なくありません。採用時点で総合職と一般職・技能職・販売職・ドライバー職などに分かれている場合、総合職以外のコースは職務内容が一定の範囲に限定されており、給与もコースごとに定めています。こうした正社員もジョブ型のようなものです。

 つまり、職務内容が「何でもあり」で、最も職務給になじまないのが総合職というわけです。多くの企業において職務給の課題は「総合職の給与を仕事別にどう決めるか」ということです。

photo 画像はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 しかし、これまで総合職の給与が仕事と無関係だったかというと、決してそんなことはありません。職務給を導入していなくても、役職手当や営業手当などがある企業は珍しくはなく、むしろごく普通だといえます。

 役職手当や営業手当は仕事基準の給与なのですが、ここで取り上げようとしている職務給とは異なります。「手当」は、給与全体からするとあくまで補助的な位置付けです。基本給に少し仕事に応じた差を付けるだけですから、仕事を基準に基本給そのものを決めようという職務給の考え方とは根本的に異なります。

 また、給与項目の名称は職務給に限らず、本給、役割給など、いろいろな呼び方をされることがあります。ここで言う「職務給」とは「仕事基準の給与であり、基本給のうち主要な項目になっているもの」を指します。基本的な給与処遇を決める意味では、何らか仕事基準の等級制度にひも付いた給与であることが前提です。

 人事制度の根幹をなすものは、等級制度、給与制度、評価制度の3つです。特に等級制度は、人事制度の背骨ともいわれる最重要の制度です。等級制度が能力基準であれば給与制度と評価制度もそれに連動します。等級制度が職務基準に変われば給与制度と評価制度も変わります。トータル人事制度とはそういうものです。つまり、処遇の根幹である基本給を職務で決めようとすると、職務基準の等級制度を持つ必要があるわけです。

 そのため、ごく大ざっぱには「職種や担当業務が変わると給料が変わる」といえなくはないですが、実際には多くのバリエーションがあり、一口に職務給と言ってもそれぞれ大きく様子が異なります。

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