「10日で1万食」「来春までに130トン」 収まらないホタテショックの裏で、どんな支援が広がっているのか長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/4 ページ)

» 2023年11月23日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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ケンミン食品・崎陽軒のキャンペーン

 中華では、ビーフンメーカーとして国内最大級のケンミン食品(神戸市)が、本社ビル1階で経営する「健民ダイニング」にて、期間限定で北海道産のホタテ貝柱を使った「海鮮焼ビーフン」を提供した。現在は、秋季限定メニューとして「北海道産ホタテと淡路牛の四川煮込み」(3200円)を提供している。家庭でもホタテの消費が進むように、同社が運営するレシピサイト「一日一レシピ」でも、ホタテを使ったビーフンレシピを公開した。

健民ダイニングで提供した、北海道産ホタテ貝柱使用の海鮮焼ビーフン(出所:プレスリリース)

 北海道内の水産業者からは「ホタテが中国に輸出できず、地域によっては冷凍庫に余裕がなくなってきている」「突然の処置でホタテの行き場がない」といった訴えがあり、海鮮焼きビーフンのホタテを北海道産ホタテ貝柱へとグレードアップするキャンペーンを実施するに至ったという。同社は20年にコロナ禍で、外食向け水産物の需要が落ち込んだ際にも北海道からカニを仕入れた。そこで、今回のキャンペーンの仕入先とのつながりが生まれた。

 崎陽軒では11月11日から、北海道産帆立応援企画を順次実施している。第1弾として、11月11〜30日に「帆立づくし弁当」(1190円)を約160店で販売。第2弾として、11月20日〜12月20日に北海道産の冷凍ホタテをECサイト限定で販売している。さらに12月には第3弾として、同社が経営するレストラン全店で、北海道産ホタテを使ったメニューを提供する予定だ。

崎陽軒の帆立づくし弁当(出所:プレスリリース)

セブン・ローソンでは消費量の目標設定も

 コンビニでは、セブン-イレブンが10月17日に、北海道産ホタテを使った商品を全国の店舗で販売開始した。「北海道産帆立使用 ほたてめしおむすび」(237円)と、「北海道産ほたてのクリームグラタン」(572円)の2品で約70トンの北海道産ホタテを消費する見込み。今後も継続し、来春までに総量約130トンの北海道産ホタテを使用するという。

セブンが10月に発売した、ほたてめしおむすび。クリームグラタンと合わせて70トンほどの北海道ホタテを消費する見込みだという(出所:プレスリリース)

 ローソンでも10月24日から、店内調理サービス「まちかど厨房」を展開する東北地方の約460店舗にて「おにぎり ホタテフライマヨ(青森県むつ湾産ホタテ)」(268円)を販売。青森県産ホタテの海外輸出が激減したことを受け、約700キロの青森県むつ湾産ホタテを使用する見込みだという。他チェーンと比較して、地産地消の面が強い取り組みだ。

 海産物禁輸措置がいつまで続くか全く見通せないが、ワタミ・崎陽軒のように継続的にキャンペーンを実施する企業があるのは、ホタテ業者にとって心強い状況といえるだろう。ただ、キャンペーンの多くはホタテに限定している点が気がかりだ。例えば「ナマコは食べ方が限られる」といった声が外食各社から聞かれる。料理に精通した各社のアイデアで、ホタテ以外の商品でも大量消費につながる新メニューが開発できないものだろうか。食材以外では、石けんの原料として活用する手もある。ナマコの石けんはマレーシアのお土産として人気がある。

 日本人の「魚離れ」が指摘されて久しく、水産庁の調査では、食用魚介類の1人1年当たり消費量は01年度の40.2キロをピークに減少し、21年度は23.2キロと、半減に近い減り方を見せている。そのため水産業者は海外に活路を開こうとする動きを見せてきたといえる。今回のホタテ支援を通じて、漁業の持続を可能にするような、国内の魚介類の消費拡大につながるきっかけにもなってほしいと願うばかりである。

北海道庁地下食堂で提供されていた定食(出所:北海道庁公式Webサイト)
ホタテ漁の風景(出所:北海道庁公式Webサイト)
手作業による殻むき作業の様子(同前)

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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