では、なぜ大阪王将はこんなにも「職人」にこだわるのかというと、この町中華チェーンをここまで成長させてきた文野会長の「実体験」に基づく経営哲学からだ。
実は文野会長は父が創業した大阪王将の店舗で小学生のころから手伝いをして、高校在学中にはなんと店長になっている。卒業した高校に、こんな「思い出」を語っている。
『中学を卒業してすぐに就職した同じ年ごろの人と肩を並べ、餃子を「巻く」スピードや出来上がりの美しさなど、技量を競うように磨きました。「職人の道は楽しかった」と振り返ります』(学校法人常翔学園 活躍する卒業生)
「中興の祖」ともいうべき文野会長も現場では「職人」として生きてきた。そして、独自の成長モデルにも「職人育成」という考えが組み込まれている。このような組織の中では「職人文化」があらゆるところに根付くのも当然だろう。そこで問題は、この職人文化は良い面もあれば悪い面もあるということだ。
職人の世界における親方が弟子に熟練の技を手取り足取り教えていくような、緻密(ちみつ)で丁寧なOJT(オンザジョブトレーニング)や、数値化できない微妙な感覚の継承などが重視されることは間違いなく「良い面」だ。
しかし、その半面、「親方の指導に口答えは許さない」「習うよりも慣れろ、盗めという突き放した指導」「叱責、怒声、長時間労働などの厳しさを乗り越えて一人前という思想」など「悪い面」も多々ある。つまりは、職人文化というのはどうしてもパワハラやブラック労働的な負の側面が必ずつきまとうということだ。
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