危機をチャンスに変える ホテルニューアワジの発想力(5/6 ページ)

» 2023年12月04日 09時28分 公開
[産経新聞]
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淡路島全体で魅力発信

 新型コロナウイルス禍は淡路島観光にも大きな打撃を与えた。令和2年のゴールデンウイークは自治体の要請によりホテルの休業を余儀なくされた。

 だが4年の売上高は163億円と、165億円を計上したコロナ禍前の元年水準に戻り、「回復は意外と早かった」という。淡路島は関西圏から短時間で行けることから、感染拡大下において密を避けながら近場で楽しめる「マイクロツーリズム」のリゾート地として注目された。

露天風呂付き客室を紹介する木下紘一さん=兵庫県洲本市(甘利慈撮影)

 増加をたどる個人客を狙い、客室の一部を30年ほど前から改装していたこともプラスとなった。一般客室より広く、プライベートな空間に客室と庭園がおさめられた「楽園」シリーズの予約が急増。また、愛犬と泊まれる施設の拡充も以前から取り組み好評を得ていたが、コロナ禍でさらに需要が高まった。

 昨年はこうしたニーズに応え、天然温泉の露天風呂付き客室を増やすなどしたほか、香川や滋賀で取得した運営施設にも愛犬と泊まれる客室を採用した。

 客室やサービスを強化する際、最も重視しているのは「時代」を読むことだ。

 「少子化の時代となり、子供のいない家庭や、子育てを終えて夫婦2人だけの世帯が増えている。そうするとペットを飼おうとする人も多い」

 以前から「ペットを連れて旅行をしたい」「そんな宿が少ない」との声が客から寄せられていたという。

 両親2人とその祖父母の4人の財布が1人の孫に集中する「6ポケット」の時代となり、祖父母が費用を負担して3世代で楽しむ旅行も増えている。コロナ禍に里帰りが難しくなり、プライベートな空間が保てる場所で会いたいというニーズも生まれた。

 命のありがたみや人生の過ごし方を見直す機会も増えた。「人生最後の旅」と家族を連れてきたという客もいれば、高齢で体力的に大浴場へ行くのは難しいが、客室に温泉があれば家族の介助を受けながら入浴を楽しめると喜ぶ客もいる。「コロナ禍で気付かされたことは多い」と話す。

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