まずは目睫(もくしょう)に迫った24年問題。いわゆるドライバーの労働環境改善を見据えた労働法規の改正に伴うドライバー不足問題である。これで物流が破綻すれば、ものづくり企業が大打撃を受ける。JAMAに取っても大事なのである。
カーボンニュートラルに際しても、定期運行便が多い商用車の世界なら、限られた範囲のインフラ整備で実証実験が可能だ。乗用車はいつどこでインフラサポートを要するか分からないが、商用車の一部は完全な定期運行。そうでなくても必ずターミナルに立ち寄るなど、新規インフラの実験が明らかにやりやすい。例えば水素などの実証実験をしようとしても、少ない拠点で確実な安定消費、つまり需要があるので、スタートが切りやすくなる。
荷主とトラックをデータ通信でつなぎ、物流の効率化も狙える。いわゆるDXである。単純な話、日本の貨物の積載率は平均50%といわれているが、これは何も少ない荷物で運行しているという意味ではない。往路で荷物を運んだあと、復路は空荷になるから50%という計算になっているわけだ。データ通信やAIを利用してこの復路便を活用する方法が確立されれば、物流のエネルギー消費も、商用車由来の道路混雑も半分にできるかもしれない。
あるいは自動運転に際してもそうだ。技術の安全性はもちろん重要なことだが、だからといって完璧はない。リスクに対するある程度の社会受容性がなければ実証実験は成立しない。そこのボタンをかけ間違えると、GMクルーズの自動運転事故のような大幅な手戻りを余儀なくされる。しかし商用車であれば、例えば港湾内部とか、工場内、鉱山内など、一般の交通と遮断され、実証実験について十分に説明を受けたプロだけの環境でトライできる。
あるいはBEVのバッテリーの節約も商用車ならではのアプローチが可能だ。トラックのバッテリーを交換式にする方法だ。乗用車を交換式にしようとすれば、搭載しているバッテリーに加えて、予備バッテリーが必要になり、バッテリー資源のトータル消費量が増えるし、かつそのコストもオンされて高くつく
しかし計画運行のトラックであれば、前日までには翌日の運行距離は確定できる。例えば大中小の3種のバッテリーを用意して、その日の運行距離に応じて最適なバッテリーを搭載することが可能になる。最も頻繁に使うルートが仮に小サイズでまかなえるなら、そこに念のために余分な容量を備える必要はなくなる。幸いなことにラダーフレーム構造の商用車なら、パッケージに大きな影響を与えることなくバッテリー搭載量を可変にできる。使い切りバッテリーサイズのBEVなんてことができるのは商用車だからだ。
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