なぜ会社員もせっせと「裏金」をつくってしまうのか 日本にはびこる「員数主義」スピン経済の歩き方(1/5 ページ)

» 2023年12月12日 11時25分 公開
[窪田順生ITmedia]

 自民党が「裏金」でぶっ壊れそうだ。

 政治資金パーティーで、議員がノルマを超えて集めた資金をキックバックしていることが判明。しかも、一部の議員がそれを収支報告書に記載せず、裏金として懐に入れていたという疑惑が持ち上がっているのだ。つまり、民間人がやったら「脱税」として一発アウトなことを政治家が平気でやっていた可能性があるのだ。

 この裏金づくりの疑惑は、自民党の全派閥で浮上しているが、その中でも突出して悪質なのが、安倍派(清和研究会)だと言われ、直近5年の裏金の総額は約5億円に上るという報道もある。そのため、マスコミ記者の間では、東京地検特捜部によって年内には「安倍派の大物議員」が逮捕されて、岸田政権が吹っ飛ぶなんてシナリオもまことしやかにささやかれている。

裏金をめぐって、自民党が揺れに揺れている(出典:ゲッティイメージズ)

 このような話を聞くと、「高い給料をもらって、政党交付金として159億円もの税金までもらっていて脱税するなんてどこまで強欲なんだ」「もう自民党は解体だ!」と怒りが爆発する方も多いだろう。ただ、怒っているだけでは何も解決しない。「政治とカネ」の問題がいつまで経っても繰り返されるように、「見せしめ」のような逮捕者を出して政局が盛り上がるだけで、何年かすれば同じ問題が浮上する。

 なぜ「裏金」をせっせとつくってしまうのか、なぜそれを悪いことだと思わないのか、という本質的かつ構造的な問題にまで目を向けなければ、同じことの繰り返しなのだ。

 では、われわれがまず直視すべきことは何かというと、「日本のあらゆる組織には裏金文化がはびこっている」という醜悪な現実だ。

 大企業や中小企業で働くサラリーマン、役所や警察でマジメに働く公務員など、組織の中で歯車となっている人々の中には必ず一定の割合で裏金に手を染める人がいる。自民党がどうとか安倍派がどうとかという以前に、日本のありとあらゆる組織、業界に「裏金」は存在しているものなのだ。

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