さて、日本のあらゆる組織に裏金がはびこっていることが分かっていただけたかと思う。組織人は、自分が属する組織の恥部・暗部は腹におさめておくものなので、発覚しにくいだけで実際はかなりの裏金があるはずだ。
いくら綺麗事を言ったところで、日本の政治家、役所、警察、そして民間企業は「何かあったときに自由に使うことができる裏金」を重宝してきて、「プール金だ」「予備費だ」と名目をつけては、せっせと裏金づくりに勤しんできた事実があるのだ。
では、そこで気になるのは、なぜ日本人はそんなに裏金に依存してしまったのかということだ。確かに組織を運営するうえで、このような「表に出さないでいざというときに使えるカネ」があればありがたいことはこの上ないが、職業倫理やモラルとしては受け入れ難いはずだ。
しかし、現実は「マジメな日本人」が多く手を染めている。なぜこんな不可解な現象が起きるのか。筆者は「員数主義」に原因があるのではないかと思っている。
「員数主義」というのは簡単に言えば、「とにかく数字の帳尻さえ合うのであればどんなことをしてもいい。それが多少モラルを欠いたことでも問題ない」という旧日本軍にまん延していた考え方だ。
そのあたりは評論家の山本七平氏が『一下級将校の見た帝国陸軍』(文春文庫)の中で詳しく述べている。従軍経験もあった山本氏は同書の中で、軍隊内で行われていた帳簿上の数と現物の数とが一致しているかを調べる「員数検査」についてかなり触れている。
軍隊というのは、軍服から銃弾ひとつとっても、すべて天皇陛下からのありがたい支給品だ。ゆえに、紛失してしまうのは許されない大失態だ。もし「員数検査」で部隊に支給された物品の数が合わないようなことがあれば、検査担当者からこんな罵声が飛んできたという。
「バカヤロー、員数をつけてこい」
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