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副業でも「人が集まらない」とき、見直すべき求人のポイント(2/2 ページ)

» 2023年12月22日 10時30分 公開
[中俣良太ITmedia]
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副業求人の「情報の透明性」と「条件の柔軟性」がポイント

 副業求人への意識と、副業を行う動機との関係性を分析していくことで、より多角的に副業求人への「応募控え」の事象を読み解くことが可能だ。本調査では、副業を行う動機として、「自己実現」「スキルアップ・活躍の場の拡大」「収入補填」「なりゆき・頼まれ副業」「本業への不満」「現職の継続就業不安」という計6つの動機が明らかになっている(※3)。前半の2つはポジティブな副業動機、後半の2つはネガティブな副業動機と捉えられる。

 これらの副業動機が副業求人の意識に与える影響を分析し、整理したものが以下の図5である。主だった傾向として、ポジティブな副業動機は副業求人の「柔軟性のなさ」「情報の不明瞭さ」、ネガティブな副業動機は副業求人の「役割・権限の重さ」「経験・スキルの高さ」との関係性が強いことが分かる。

 「副業によって新たなスキルや経験を獲得したい」といった、前向きな動機を持つ副業意向者については、副業求人の内容の《物足りなさ》を感じることで求人応募をためらう。一方、消極的な動機を持つ副業意向者は、副業求人の《ハードルの高さ》を感じることで求人応募をためらうといった二者の異なる様相がうかがえるのではないだろうか。

 図5の結果を踏まえると、前向きな動機を持つ副業意向者の「応募控え」につながりやすい、副業求人への「アンバランスさ」の意識を低減させること、つまり副業求人における「情報の透明性」と「条件の柔軟性」の要素を優先して高めていくことがポイントと考えられる。

photo 図5:副業動機と副業求人への意識の関係(出所:パーソル総合研究所「第三回 副業の実態・意識に関する定量調査」)

(※3)項目の詳細については、「第三回 副業の実態・意識に関する定量調査」内のAppendixを参照されたい。

副業求人への重要な記載事項

 それでは「情報の透明性」「条件の柔軟性」を高めるために、副業求人の中にどのような情報を記載すればよいのだろうか。より詳細な副業求人の記載事項を分析することでその示唆が得られた。副業求人の記載事項について、副業意向者には「不足している」と感じる情報、企業の人事担当者には実際に記載している情報を聴取している。そして、前者の割合を縦軸、後者の割合を横軸に定めて作成したマップが図6だ。左上に布置される情報ほど、重要な記載事項として捉えることができる。

 結果として、「副業先で働く上で大変なこと・デメリット」「職場の雰囲気・組織風土」「責任範囲」「働き方の柔軟性」などの記載が重要であることが分かった。特に、自社にとってのネガティブな情報や組織風土の記載は、他の項目よりもマップ上の左上に布置されており、「応募控え」意識を低減させる上で有効である可能性が示唆される。これらの情報を記載し、透明性を高めていくとともに、責任範囲や働き方などの要素は、副業意向者の状況に応じて柔軟に対応する旨の情報も記載してみてはどうだろうか。

photo 図6:副業求人における重要な記載事項マップ(出所:パーソル総合研究所「第三回 副業の実態・意識に関する定量調査」)

まとめ

 ここまで、「第三回 副業の実態・意識に関する定量調査」のデータを基に、企業が副業求人を募集する上でのポイントを見てきた。現状、副業求人の応募が十分来ている企業は多くなく、今後企業が副業人材を獲得するには、副業マッチングのプラットフォームなどの活用や、副業求人への「応募控え」意識を低減させていくことがポイントであることが分かった。また「応募控え」意識低減のために、企業は、副業求人の「情報の透明性」や「条件の柔軟性」を高めていくことが重要である。本調査からは、副業求人の中に「副業先で働く上で大変なこと・デメリット」や「職場の雰囲気・組織風土」の情報の記載が、「応募控え」意識低減の上で特に有効である示唆が得られている。

photo (提供:ゲッティイメージズ)

 「自社のウリ」を記載している求人は数多く見られるが、求職者の不安要素に触れている求人は少ない。「自社で働くメリット」を伝えることはもちろん大事だが、自社の弱み・デメリットや職場のリアルな雰囲気なども積極的に開示し、求職者が「自社で働く上での不安」を事前になくすことが重要だ。

 「職場の雰囲気・組織風土」の情報として、組織サーベイの定期的な実施とその開示も副業求職者にとって有益な情報になるであろう。職場の雰囲気は、実際に働いてからでないと感じにくい要素ではあるが、定期的に組織サーベイを行っていくことで、部署ごとの組織風土やその推移が分かる。定量的なスコアを基に組織風土を可視化し結果を開示することが、「応募控え」意識を低減させる上でも有効な施策の一つではないだろうか。本コラムで示した知見が、企業の副業求人の在り方を議論する上でのヒントになれば幸いである。

パーソル総合研究所シンクタンク本部研究員。大手市場調査会社にて、3年にわたり調査・分析業務に従事。金融業界における顧客満足度調査やCX(カスタマー・エクスペリエンス)調査をはじめ、従業員満足度調査やニーズ探索調査などを担当。

担当調査や社員としての経験を通じて、人と組織の在り方に関心を抱き、2022年8月より現職。現在は、地方創生や副業・兼業に関する調査・研究などを行っている。

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