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管理職とプロフェッショナル職 どちらを選べばより稼げる? 人事のプロが解説(1/2 ページ)

» 2023年12月08日 12時30分 公開

 従業員のキャリアに、マネジメント職(組織長)とプロフェッショナル職(非組織長、専門職)の2つの選択肢を設ける企業が増えてきました。両者の給与をどのように設定・調整するかは、自社の人事制度を試行錯誤する人事職のみならず、キャリアに悩む多くのビジネスパーソンにとっての関心事でしょう。

 マネジメント職とプロフェッショナル職、どちらを選ぶ方が給与処遇面で有利になるのでしょうか。

どちらが“お得”なのか?

 業務内容を給与にひも付ける「職務給」についてこれまで3回にわたって解説してきましたが、今回はプロフェッショナル職の職務給について考えます。

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 年功的な運用になりやすい「職能給」制度では、例えば部長クラスの等級には「組織長の部長職」「ホンモノの高度専門職」「そのどちらでもない人」の3種類の人たちが混在しますが、誰もが部長職の人と似たような給料をもらいます。

 この矛盾の解消を狙って、管理職層の給与は職務給へと移行しつつあります。

 管理職層にマネジメント職とプロフェッショナル職を並立させる企業もあれば、管理職層はマネジメント職のみとし、非組織長や専門職は一般社員層に位置付ける企業もあります。制度上、管理職層にプロフェッショナル職を設けるケースも、その運用は多くの場合、厳格です。

 職務給導入企業に共通する基本的ニーズは、管理職層の3種類の人たちの給与を役割と責任の重さに応じたものに変えていきたいというものなので、プロフェッショナル職の認定は狭き門なのです。

 パーソル総合研究所が職務給導入企業にヒアリング調査(職務給に関するヒアリング調査)を行ったところ、高度専門職として認定される管理職層のプロフェッショナル職には、各社にほとんど共通する相場観があることが分かりました。

 職責の重さを軸にしてプロフェッショナル職をマネジメント職と同等の等級と認定するには、部長相当であれば業界の第一人者クラスの人、課長相当であれば単独で課組織並みの職責や貢献度を持つ人というレベル感です。企業のコメントを紹介します。

「制度上、部長相当のプロフェッショナル職のグレードは設定されているが実在者はほとんどいない。その業界の専門家であり超有名人で、自分一人で業界を動かすレベルの人であれば部長相当のグレードでもよい」

「標準的な規模の課組織並みの貢献を一人で出せるのであれば、課長相当で処遇するという考え方」

「かなり専門性が高くても、たいていは課長相当のグレードが上限になる」

 職責ベースで文字通りに解釈して運用すると、部長相当はもちろん、課長相当であってもプロフェッショナル職になるにはかなりハードルが高いといえそうです。

photo (図表1)プロフェッショナル職の相場観

 プロフェッショナル職の実際の運用としては、職責の他にもう一つの軸があります。それは「希少性」です。実態として、プロフェッショナル職の多くは技術系職種です。そのため、技術系研究職やエンジニアを多く抱える製造業やIT企業ではプロフェッショナル職が管理職層の4分の1〜3分の1を占めることが珍しくありません。一方で、技術系社員が少ない業種の企業では数%程度であったり、制度上管理職層には設定がなかったりするなど、両者のプロフェッショナル職の人数には大きな開きが見られます。企業コメントを紹介します。

「基本的にプロフェッショナル職は技術系ばかりで事務系の人は極めて少なく、事務系では財務、法務、人事などに数名いる程度。ジョブの価値やリテンションの必要性を考えるとそうなる。エンジニア系は引き抜かれるので、リテンションのためにプロフェッショナル職に認定するパターンが多い」

「営業職のプロフェッショナル職はほとんどいない。営業部門のプロフェッショナル職は営業部に在籍していてもセールスという感じではなく、技術バックグラウンドがあるアカウントマネジャーのような人」

 プロフェッショナル職の設置は、需給がタイトな職種の採用やリテンションを主な目的としているようです。営業系職種がプロフェッショナル職に認定されにくいのは社内外に人数が多いため、そして、業績には浮き沈みがつきものなので、高業績に対しては基本給項目の職務給ではなく賞与で処遇すればよいという考え方が強いためです。

 「(図表2)職責×希少性マトリックス」をご覧いただくと、マネジメント職は職責の大きさで高グレードに格付けされ、プロフェッショナル職は職責ではマネジメント職に劣るものの人材市場での希少性が高ければ高グレードになるという形です。営業職のプレーヤーは職責と希少性のいずれの観点でも高グレードに当てはまりづらく、その代わりに好業績であれば賞与で処遇していく傾向にあります。

photo (図表2)職責×希少性マトリックス
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