リテール大革命

「2024年問題」だけじゃない! 小売業界が直面するいくつもの重要課題前編(2/4 ページ)

» 2023年12月28日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]

重要テーマ(2)「脱・チェーンストア」の実現

 世代による消費の多様化などで、小売に対するニーズはこれまでにないほど細分化されています。対応するには、これまでの画一的なチェーンストアオペレーションを脱することが必須です。店舗別の品ぞろえを細かく調整し、廃棄ロスを軽減させることは、環境の観点においても重要でしょう。

 例えば、都内にある丸の内や大手町のようなオフィスビルに囲まれた立地で、果たして洗剤はどれだけ売れるのか。子ども向けのお菓子を陳列するのが必要なのか――という観点です。ユーザー目線では「それくらい、今までも調整してきたのではないか?」と思うかもしれません。しかし、商慣習を考えると簡単なことではありません。

 理由は小売とメーカーの関係性にあります。メーカーはとにかく、陳列の棚を競合よりも多く確保することを重視します。また、可能な限り全店舗に多くの量の商品を配荷できるよう小売側に交渉します。そこでは「大量に納入させてもらった方が、一つ当たりの原価が安くなります」というアプローチも行われるでしょう。

 その結果、女性人口の著しく少ない店舗にも化粧品は多く陳列され、オフィス立地に洗剤や子ども向けお菓子が並ぶことになります。理想は小売・メーカー・ユーザーの3者がバランスよくメリットを享受することです。そのためには、まず個店別の需要予測によって品ぞろえを最適化し「A店への商品配荷数は減ってもB店で販売数が増加することにより、全店舗のトータル数は以前よりも上がる」といった状態を目指すと良いでしょう。

 小売側で、こうした「脱・チェーンストア」の動きは15年ごろから進んでいます。メーカー側においても、ただ多く納入し、店舗を見ると売れ残っているという現状を課題視する動きは出始めました。しかし、いまだ「とにかく競合より多く陳列の棚を取りなさい」と号令を出す企業が多いのも確かです。需要予測システムや売場を分析するカメラなどがいかに発展しても、こうした商流や各プレーヤーの意識が変わらない限り、個店別の品ぞろえ対応は実現しません。大変難易度の高い問題ですが、避けては通れない課題です。

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