現在展開している店舗の商圏人口が10年、20年先どのように変化していくか。また、出店の不動産確保が今後どれくらい見込まれるか、はたまた閉店予想など、ネガティブな要素を数字で明確にしながらシミュレーションするのも効果的です。「このままでは、30年後にはこれだけ売り上げが減る」という試算や課題が見えてきます。
課題が見えたら「今すべきことは何か」に立ち返りましょう。30年先の理想の姿を描くことももちろん大切ですが、既存の事業構造へ警鐘を鳴らすきっかけにもなります。もし新たな対策を取らず、現状の延長線でどうなるかを数字で把握しておくことは大変重要なのです。
採算が取れないから閉店する。この決断は、営利企業であれば当たり前のことです。しかし、国内流通業の長い未来を見据えた上で考えると、見えてくるものが変わります。
「モノが届く」という基本的価値を誰かが担わなくては、買い物難民どころか買い物が不可能な層さえ生み出しかねません。他のサービスや収益を付加したり、行政と連携するモデルを模索したりといった形で、収益性と持続性の両立を実現していくことが小売には求められるのです。
これはテーマ(1)として書いた新規事業にも関連してくる事項です。ニューヨークやサンフランシスコでは閉店に追い込まれた無人店舗モデルが、日本では地方における店舗維持のために活用できる可能性もあるかもしれません。小売は、自社だけではなく地域や流通網の持続性という部分に目を向けてサステナビリティを実現する、大きなミッションも担っているのです。
さて、今回の記事では5つのテーマを紹介してまいりました。12月29日に公開予定の次回記事では、残りの6テーマを解説していきます。ぜひそちらも合わせてご覧いただき、小売に関係する読者が戦略を策定するための一助となれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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