既存業態で従来通りに出店を拡大することは、店舗網が飽和して人口減も進む日本の市場において困難になりました。かといって出店を諦めると、大きな売上拡大を見込めなくなります。そこで必要性が高まるのが、新業態開発とM&Aです。つまり、新業態を開発して出店をしていくか、他の企業を買収してその店舗網を自社のものとするか、です。
新業態開発ではコーナン商事が展開するプロの職人向け業態「コーナンPRO」や、ドン・キホーテの「おドろき専門店」をコンセプトにした「ドミセ」などが好評を博しています。セブン&アイ・ホールディングスが発表した、コンビニとスーパーストアを組み合わせた「SIPストア」の展開にも注目が集まります。
「出店は既存店ではなく新業態で行う」「新業態開発が具体的にならない場合は、M&Aで面を広げていく」という戦略は、今後も継続していくことでしょう。特にドラッグストアでは、ヘルスケア市場のシェア拡大のために統廃合が活発化していくことが予想されます。
1月、第一生命保険が住信SBIネット銀行・楽天銀行と組んだネット銀行サービスを開始しました。楽天銀行はJR東日本グループとともに「JRE BANK」を24年に開業することを目指しています。22年末にはNTTドコモが三菱UFJ銀行と共同で「dスマートバンク」を提供開始するなど、新銀行ラッシュの様相です。
中でも住信SBIネット銀行が推し進める「NEOBANK」事業は、金融と縁遠かった企業にもネット銀行機能を提供しており、企業は免許なしで金融サービスに着手できるため、第一生命保険や高島屋、ヤマダ電機、日本航空などが取り入れています。このように銀行のBaaS(Banking as a Service)推進により、小売も金融業へ参入しやすい状況が整備されています。
金融と小売は大変重要な関係性にあり、金融とCRM・アプリ・ポイントプログラム・クーポンなどが連携することで、多角的な価値を創出します。自社店舗やグループ企業の経済圏を強固にするだけではなく、従来競合の経済圏であった市場でも自社金融サービスが使用されることで手数料収入も生み出し、競合経済圏から自社経済圏への集客までが実現するでしょう。金融は小売において、もはや避けて通ることはできない最重要テーマの一つなのです。
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