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あまりに「日本企業あるある」だ──ダイハツ不正の背景にある病理を読み解く働き方の「今」を知る(3/3 ページ)

» 2023年12月29日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]
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「ダイハツの将来を悲観してはいない」

 経営陣は、短期開発の厳しいプレッシャーから、認証申請書類の不備が発生した状況は認識していたが、不正が発生する可能性までには思いが至らず、表面的な改善策を受け入れるのみで、現場で何が起こっているのか実態を把握する対応はしなかった。このとき、短期開発が認証プロセスに与える影響や現場の状況について、もう一歩踏み込んだ実態把握をしていれば、認証申請書類の不整合をチェックする体制が存在しないことや、開発・認証プロセスのモニタリングが不十分であることなどについて気付ける機会があったかもしれない。

 「短期開発」を差別化要因として打ち出すのであれば、その方針が及ぼす現場へのシワ寄せや弊害などリスク要因についても敏感になり、あらかじめネガティブリスクを避けるための手を打っておくべきであった。

 もちろん、これらは決してダイハツだけの問題ではない。報告書は厳しい指摘とは一転し、最後は激励で締められているが、その文章にもある通り、現場の従業員の皆さんがどれだけ真摯に仕事に取り組んでいても、職場の風土次第では、不正を正当化せざるを得ない状況に追い込まれてしまうこともある。だからこそ経営陣には、従業員一人ひとりの力が真っ当に発揮され、きちんと報われる職場環境を整えることこそが重要な役割だと自覚していただきたい。

 「前途は多難であるものの、当委員会は、ダイハツの将来を悲観してはいない。調査の過程で当委員会が接した従業員は総じて真面目であり、改善の方向性さえ間違えなければ必ず信頼を回復することができると期待している。今回の問題を乗り越えて新たな『ダイハツらしさ』を獲得することを切に願って当委員会の報告を終える」──。

著者プロフィール・新田龍(にったりょう)

働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役

早稲田大学卒業後、複数の上場企業で事業企画、営業管理職、コンサルタント、人事採用担当職などを歴任。2007年、働き方改革総合研究所株式会社設立。「労働環境改善による業績および従業員エンゲージメント向上支援」「ビジネスと労務関連のトラブル解決支援」「炎上予防とレピュテーション改善支援」を手掛ける。各種メディアで労働問題、ハラスメント、炎上トラブルについてコメント。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。

 

著書に『ワタミの失敗〜「善意の会社」がブラック企業と呼ばれた構造』(KADOKAWA)、『問題社員の正しい辞めさせ方』(リチェンジ)他多数。最新刊『炎上回避マニュアル』(徳間書店)、最新監修書『令和版 新社会人が本当に知りたいビジネスマナー大全』(KADOKAWA)発売中。

11月22日に新刊『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)発売。


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