ダイハツ工業の創業は明治40年(1907年)。日本の量産車を手掛けるメーカーとして最も古い歴史を持ち、軽自動車販売シェアでは17年連続1位を誇る。世界で178万台もの自動車を生産し(2022年度)、インドネシアでの生産台数、マレーシアでの販売台数でトップシェアを保持している。
そのダイハツにおいて23年4月、自動車の安全性確認試験で不正行為があったことが内部告発により発覚。その後第三者委員会を立ち上げて問題を調査していたが、12月20日に調査報告書の内容が同社から発表された。
報告書では、最も古い事例で1989年から不正が行われていたと認定。その後の調査によって、新たに25の試験項目で174件の不正が判明したという。結果として、同社が国内で生産・開発しているほぼ全ての車種における安全性試験で不正行為が確認され、ダイハツは国内外で生産・販売する全ての車種の出荷停止を発表するという前代未聞の事態へと発展している。
生産終了車や海外向けの車まで含めると、総計64車種にも上る今回の不正はなぜ起きたのだろうか。そのヒントは、今般公表された「第三者委員会による調査報告書」に隠されている。報告書内の後半部分で「不正行為が発生した直接的な原因およびその背景」として、同社の組織風土や職場環境における問題点が生々しく記されているのだが、その内容があまりに「日本企業あるある」だとネットを中心に話題になっている。
報告書では「本件問題の真因」として大きく2点、「不正対応の措置を講ずることなく短期開発を推進した経営の問題」と「ダイハツの開発部門の組織風土の問題」を挙げている。すなわち、会社を挙げて「短期開発」を至上命令として取り組んできた結果、強烈なプレッシャーの中で追い込まれた従業員が不正行為に及んでしまったものであり、経営陣は不正を想定しておらず、予防策もとっていなかった。不正行為に関与した従業員は、経営の犠牲になったものであり、強く非難することはできない、という論調だ。
中でもネット上で特に共感の声が多かったのが、同社社員に対するヒアリングやアンケート調査から導き出された、ダイハツの組織風土にまつわる部分だ。報告書では多くのページを割いて、実際の社員に対するアンケート調査結果や委員会の分析から、ダイハツの職場風土の問題点を次のように列挙している。
労働環境が劣悪な、いわゆる「ブラック企業」出身の筆者としては、挙げられた要素一つ一つにさまざまな過去の思い出がフラッシュバックしてよみがえり、報告書を読み進めるにも大変胸が痛い思いをした次第だ。
おそらく読者の皆さんも「これってウチの会社のことでは……」と感じられた部分があるのではないだろうか。
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