これまで、サントリーのビールで主力だったのはやや高級価格帯の「ザ・プレミアム・モルツ」ブランド。一方で手薄だったのが「アサヒスーパードライ」「一番搾り」などがひしめくスタンダードゾーンだ。ビールの「ど真ん中」ともいえる価格帯で勝負するべく投入したのが、サントリー生ビールだった。
サントリー生ビールの開発は、従来のようなブランド部が主導する形ではなく、21年4月に発足した「イノベーション部」が担当した。コロナ禍をまたいで生活習慣や消費者の価値観が変化する中、既存ブランドや固定観念にとらわれずビールに関する商品・サービス開発に当たる部署として新設した部門だ。現在の人数は10人ほどで、ビール事業の経験者だけでなく、法人営業やビール醸造、経理出身などさまざまなバックグラウンドを持つメンバーが活動している。
日々の業務もユニークで、大学のゼミと協力しながら若年層のトレンドをキャッチする取り組みもしている。「定性調査が定量調査になるほど徹底して現場に向き合うことで、真のニーズをつかめるようにしています」と多田氏は話す。
イノベーション部が第1弾として市場に投下したのが「ビアボール」。アルコール度数は16%、炭酸で割って自由に濃度を変えられるビールだ。これまでビールがリーチできていなかった層を開拓する狙いから、エントリー層が苦手とする「苦み」を抑えるために濃度を調整するスタイルを考案した。
第2弾が、サントリー生ビール。調査で消費者のビール缶を飲み終える時間がこれまでより延びていることを発見し、開栓から飲み終わりまで味が落ちないような工夫を施した。従来のビールとは異なる特徴で目を引くパッケージも功を奏し、前述したようなヒットを飛ばしている。
現時点で最新となる第3弾として展開しているのが、飲食店向けのサービス「nomiigo」だ。
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