常温缶が「生ビール」に 爆ヒット「サントリー生ビール」開発部署が繰り出す次の一手1分足らずで急速冷却(5/5 ページ)

» 2024年01月05日 08時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]
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お客が「おっ」と思うような提案

 実際に使用することを考えて、どのような仕組みにすればもっと早く提供できるようになるのか。スピードだけでなく、泡や温度も重視しながらギアとモーターの組み合わせや配管の仕組みを徹底的に試行錯誤していった。その結果、サイズは従来のサーバとほぼ同規模、缶のセットから提供までは2分→50秒と半分以下に短くできた。この間、サーバは5回もの試作を経ている。

 圧力のかけ方や、手入れにも工夫が施されている。工程ごとのガス圧は内部で自動調節できるようにして、炭酸ボンベ自体のガス圧は3.5キロに統一。配管も汚れにくいステンレスを採用するなど洗浄の簡易化も実現し、年間50〜70時間ほどの作業時間を削減できるという。

「味」だけでなく、導入店側のオペレーション改善にも目を向けた(提供:サントリー)

 味へのこだわりだけでなく、店舗でのオペレーションも踏まえた開発が奏功し、飲食店からの引き合いは上々の滑り出しだ。これまで瓶ビールを提供していたあるラーメン店では、nomiigoの導入によって1日5杯程度だったのが平日に20〜30杯、土日は多いときで40〜50杯も注文が入るようになっているという。

 「回転数を最大限にしている中で、どうアップセルを実現するか悩まれているところにnomiigoでお役に立てました。従来のサーバからnomiigoへ切り替える例も出ており、これまでは『缶ビールはサーバで提供されるものより劣っている』という認識もあったと思いますが、イメージを変えていければと考えています」(伊藤氏)

 酒類の王道ともいえるビールは、市場の成熟感も否めない。多田氏も「新たな層との接点作りが大きな課題でした。これからもお客さまが『おっ』と思うような提案を続けていければと考えています」と話す。単なる新商品や限定品だけでなく、飲用シーンの提案や新サービスを通して、サントリーはビールをどのように変えていくのだろうか。

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