常温缶が「生ビール」に 爆ヒット「サントリー生ビール」開発部署が繰り出す次の一手1分足らずで急速冷却(4/5 ページ)

» 2024年01月05日 08時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

nomiigoでこだわったこと

 nomiigoでこだわったのは、同社が重視してきたクリーミーな「泡」と、調査で新たに発見した「温度」の実現だ。首都圏で同社のサーバを導入している40店舗ほどの飲食店を訪問し「おいしいビール」の条件として、ビール提供時の温度が約4度であることを見出した。「冷えれば冷えるほどおいしいのでは?」と感じるが、そう単純な話でもないようだ。nomiigoの開発を担当した伊藤優樹氏(ビールカンパニー マーケティング本部 イノベーション部)は次のように話す。

 「ザ・プレミアム・モルツは、ビールの香りを楽しめる温度として夏場は4〜5度、冬場は6〜8度で飲むことを推奨しています。ただ、提供時に5〜8度だと飲み終わるまでにぬるくなってしまい、最後まで楽しめません。逆に冷えすぎると、ザ・プレミアム・モルツの強みである香りが立たないことから、飲んでいく中でも適温を維持できる『4度』に狙いを定めました」

 実現したい「味」が明確にあった一方で、開発はトントン拍子に進まなかった。伊藤氏はエンジニア畑ではなく、経理の出身。その後ビール事業の計数などを管理する業務も経験していたとはいえ、モノづくりの知識はほとんどなかったという。サーバ自体の開発を担当した大阪のパートナー企業の下へ通いながら、知識を付けていった。

モノづくり経験がない中、試行錯誤を繰り返したという伊藤氏

 21年6月に飲食店関係者向けとして試作機を披露した際も「結果は散々でした」(伊藤氏)と振り返る。実際に店舗で使用するに当たって、速度や操作性、大きさといった点で課題があったのだ。

 「当初は缶を入れてからジョッキにビールを注ぐまで、2分もかかっていました。また、現行の1缶ずつ注ぐタイプ以外に、6缶を装てんする『リボルバー式』も開発していたのですが、こちらは店舗に設置するには大きすぎることから、現行のタイプに落ち着きました」(伊藤氏)

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