次に取り上げるのは、「営業を辞めたいので、他の部署(マーケティング、経営管理、バックオフィスなど)に異動させてもらえないでしょうか」といった質問です。
多くの企業で営業部門は人手不足であり、営業を辞めたいという申し出は非常に悩ましいものです。また、異動は個人の一存で決められないため、部下の希望を叶(かな)えられない可能性もあります。こうした質問にはどのように対処すればよいのでしょうか。
まず、どんなに部署の人員状況が厳しいとしても、部下の話をよく聞かずに営業を続けるよう説得することはやめましょう。こうした質問が出る時点で転職の検討を進めている可能性があります。その部下を自社に引き留めたいと思うのなら、異動をすぐに実現させることは難しくても、部下の要望に真摯に向き合うことが大切です。
そこで、まずは部下が営業を辞めたいと考えた理由を詳しく聞き、不満や問題点を解決すれば営業を続けてくれる可能性があるのか、辞める以外の選択肢がないのかをはっきりさせることが重要です。
例えば「顧客とのコミュニケーションが上手くいかない」「営業成績が伸びない」「飛び込み営業に向いていない」「残業が多くて体力的にきつい」など、営業活動の悩みや不満が根幹にあるなら説得の余地がありますが、もう営業の仕事はやり切ったので他の職種を経験したいという場合は引き留めるのが難しいかもしれません。
その上で、説得できる可能性があるなら、課題を解決する方法(ベテランの営業にアドバイスを求める、トレーニングを勧める、営業の働き方を見直すなど)を部下と一緒に検討して、もう少し営業を続けてみないかと打診すると良いでしょう。
この時、部下に「異動させるつもりがなさそうだ」と受け取られないように、本当に営業を辞めるかどうかを判断する時期についてもあらかじめ相談して決めておくことをお勧めします。
一方で、営業を辞める意思が固い場合、すぐさま異動させることが難しい状況であれば、社内の人事戦略の説明も交えながら異動が実現しそうな時期を伝える対応が望ましいでしょう。
同時に、いずれのケースでも質問してきた部下は質問する以前からキャリアに関する悩みを抱えているはずです。深刻な状況になる前に対処できるように、定期的に1on1の時間を取るなど、部下から相談しやすい環境を整えておくことも大切です。
今回は部下からの2つの質問に絞って答え方を考えてきました。それ以外の場面でも、若い世代ほど働き方の「常識」が変化していることを自覚する、深刻な質問に発展する前に部下の悩みに気付ける環境を整備する、という2点を意識して、部下とよりよい関係を築いていってください。
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