新時代セールスの教科書

「個人目標は達成したので、もう営業しなくていいですか?」 部下の困った質問、どう返す営業コミュニケーション大解剖(1/2 ページ)

» 2024年01月10日 08時30分 公開

 「営業職」は花形職種でしたが、最近は希望する人も減ってきており、残念なことに人気が下火になっているように思います。

 企業の中には「事業や顧客のことを知る機会」として、入社後数年間は営業配属にするところもあるでしょう。営業へのモチベーションが高い社員であれば良いですが、そうでない場合、部下から「返事に困る質問」が飛んでくることもあると思います。

部下から「返事に困る質問」がきたらどうするか?(画像:ゲッティイメージズより)

 そんな時、上司としてどのようなコミュニケーションを取るべきか? 部下から聞かれて困ってしまう質問2つについて、適切な答え方を考えながら、部下との考えのズレを自覚するポイントや、双方が納得するコミュニケーションの心構えをお伝えしたいと思います。

「個人目標は達成したので、もう営業活動しなくていいですよね?」

 まず一つ目の困った質問として、「個人目標を達成した後に営業活動を続けなくてよいか」と尋ねられた時の答え方について考えていきます。

 この質問にびっくりして、困ってしまうのは、自分の営業活動の「常識」からは出てこない発想だからではないでしょうか。自分の常識から外れているというのは、他の困った質問にも共通する特徴だといえます。

 この場合、部下が「非常識」だと考えるよりも、お互いの「常識」がズレているだけで、部下には部下なりの理屈があるはずだと考えたほうが建設的です。部下の理屈に寄り添うことが、互いに納得のいくコミュニケーションには欠かせません。

 実際に部下の理屈を推測してみると「個人目標の達成→営業活動のゴール→活動終了」と図式化できるでしょう。「個人目標の達成→より高い目標を目指す(部署目標の達成、業績トップになるなど)」とならないのは、仕事に掛ける労力を少なくしたい、という前提もありそうです。

 こうした部下の姿勢に、ついつい「やる気がない」「社会人としての自覚が足りない」と感じてしまうかもしれませんが、もう少し部下視点で考えてみましょう。

 かつての常識は、1つの企業に長く勤めることでした。そのため、短期的には損(この場合、直近の業績評価でプラスにならない営業活動)でも、周囲からの信頼を得られ社内で立ち回りやすくなるなど、後の利益につながっていくかもしれないという期待がありました。

 しかし、今では転職を視野に入れ続けることが「常識」になりつつあります。こうした状況では、今の会社に過剰に貢献するよりも自身のスキルアップや転職活動に時間を費やしたいと考えるのは、共感できなくても理解はできるのではないでしょうか。

 とはいえ、実際のところ部下には営業活動を続けさせたいですよね。質問への返答としては「営業活動を止めると短期的に損になる」、もしくは「営業活動を続けると短期的にも利益になる」など納得感のある説明が大切です。

 例えば「次年度の営業目標を達成するための仕込みとして、今から活動しておかないと厳しい」という説明の仕方もあるでしょう。次年度の目標の難易度が高いようであれば、より説得的になります。

 また、現状と部署目標にギャップがあるなら、達成すれば部下自身の賞与が上乗せされる、もしくは未達だと来年度に使える営業活動費が削られるなど、具体的な影響を示しながら、チームとして営業活動を続けてほしいと伝えることもできます。

 根本的には、魅力的な業績評価制度を検討することがセットで必要な場合もありますが、コミュニケーションで対処するには、部下の質問を一旦受け止めた上で、自分の立場と擦り合わせて答えるのがよいでしょう。

 なお、自分が持っている営業活動の「常識」を教えこむというスタンスでのコミュニケーションは、上手くいく場合もありますが、部下から押し付けだと捉えられるリスクもあるので注意してください。

 続いて、より慎重に対応を考える必要がある、キャリアに関する質問への返答についても考えてみましょう。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.