「駅弁大会」なぜ人気? 逆風下でも百貨店のキラーコンテンツであり続ける理由宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(2/4 ページ)

» 2024年01月11日 08時00分 公開
[宮武和多哉ITmedia]

精鋭が集い、40万食が売れる「駅弁の甲子園」

 しかし裏を返せば、長らく続く逆風の中で生き延びてきた駅弁業者は「新規顧客の開拓」「新しい目玉商品の開発」などで厳しい経営環境を乗り切ってきた精鋭でもある。「今年も〇〇百貨店に出店します!」とWebサイトで告知を出せばファンが集まるほど、しっかりと支持を得ているのだ。

 かつ、各社にとって駅弁大会は、自社の営業エリア以外の客層に「絶品駅弁ここにあり!」と存在をアピールできる格好の場でもあるため、各地の駅弁業者は全力で駅弁大会に挑む。そういった業者が集まるからこそ、京王百貨店の駅弁大会は、約40万食が売れる「駅弁の甲子園」として名をはせているのだろう。

 また駅弁大会が行われる1月、2月は観光のオフシーズンでもあり、業者にとってはある程度の人員を割く余裕がある。百貨店にとっても駅弁業者にとっても、駅弁大会は“win-win”(双方に利益・得がある状態)なイベント催事なのだ。

 なお、24年に京王百貨店に出店する店舗の中でも「いかめし」(函館本線・森駅)の製造元「いかめし阿部商店」は、多い時で10チームが実演で全国を回るという体制を築いて広く販路を確保。淡路屋(山陽本線・神戸駅)は通信販売の体制を築き上げ、看板商品「ひっぱりだこ飯」のユニークなバリエーション展開などで、コロナ禍による「売り上げ4割減少」という苦境を乗り切っている。

 両社はいずれも敏腕・異色の若手経営陣が率いており、大会の実演ブースでは「伝統ある企業で新陳代謝を起こし、次の10年・20年につなげる」という現場をしっかりと見て取ることができる。駅弁を味わえるだけでなく、各業者の創意工夫を観察するのも、駅弁大会のもう一つの楽しみ方だ。

駅弁 森駅「いかめし」の調製元「いかめし阿部商店」の今井麻椰社長

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