乗り物全般ライターの宮武和多哉氏が、「鉄道」「路線バス」「フェリー」などさまざまな乗りもののトレンドを解説する。
1都17県にまたがり、69線区で延べ7401.2キロもの鉄道路線を展開する「東日本旅客鉄道株式会社」(以下:JR東日本)。年間で延べ60億人以上を運ぶ、世界最大級の鉄道会社だ。
そのJR東日本が、地方の鉄道路線を主とした「ご利用の少ない線区」(2022年度)の営業成績を公表した。公開の対象となっているのは輸送密度(その路線が運んだ1日の乗客数の平均)が2000人未満の34路線・62区間だ。
同社が資料によって公開した情報は、線区ごとの「運輸収入」「営業費用」「収支」「営業係数」「平均通過人員」など。その中から、「収支(営業損益)」「営業係数」「輸送密度」の3項目ごとに上位10位までのランキングを作成した。
それぞれの数値を読み解く限りでは「合計の赤字額648億円が都市圏での黒字を吹き飛ばし」「100円稼ぐのに、1万6821円経費がかかる区間があり」「列車1本に3〜4人しか乗車していない区間も多い」という実態が明らかになった。なぜ、これらの路線はここまで厳しい状況に置かれているのか? 実際の現地の状況を確認しながら、「なぜそうなるのか?」を確認してみよう。
さて、本題に入る前に「ご利用の少ない線区」で出てくる用語についてまとめてみた。 ただし、今回公表された数値は、本社・支社・指令所などにかかる経費は反映していないため、実態を反映していない場合もある。ご了承いただきたい。
運輸収入(運賃で授受した額)−営業費用(設備の保守費用・人件費など)
分かりやすく言い換えると、JRが損した額。赤字額。
収入/営業費用×100で算出。100円の利益を挙げるのに、いくらかかっているのかを表す。
分かりやすく言い換えると、鉄道路線のコスパを示す指数。
年間輸送人キロ(輸送人員×乗車距離」)÷営業キロ÷365日(うるう年は366日)
分かりやすく言い換えると、だいたいの利用者数。
※鉄道各社とも、参入する計算値の基準に違いあり
JR東日本が公表した「利用が少ない線区」34路線・62区間を合計すると、運賃収入は41.7億円、経費は690億円。JR東日本の全路線の3割ほどにあたる2218キロで、実に648億円の赤字を計上している。
なお、JR東日本の22年度(期末決算)の運輸事業(鉄道事業)は、1兆6803億円の収入(営業収益)に対して、赤字(営業損失)は240億円。地方の鉄道が計上した赤字が、都市圏で稼いだ利益を吹き飛ばす構図になっている。
さて、赤字額(営業損失)のランキングを見てみよう。
赤字額でトップとなる羽越本線・村上駅(新潟県)〜鶴岡駅(山形県)間は、収入4.5億円に対して、営業費用は54億円。実に、年間49.5億円の赤字を出している。
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