また、もう一つ駅弁大会で注目すべきは「新興勢力の奮闘」だ。50年スパンで見るとひたすら厳しい状況に置かれている駅弁業界だが、ここ20年程で見ると、「カイロ堂」(佐世保線&西九州新幹線・武雄温泉駅)、「しまだフーズ」(常磐線・水戸駅)、「有田テラス」(佐世保線・有田駅)などが参入。それぞれ地元を拠点に商品を開発・販売しつつ、各地の駅弁大会でもしっかりと顧客をつかんでいる。
なかでも、SNSなど各方面への拡散力が高い京王百貨店では、稀(まれ)に新興業者が特大のヒットを飛ばす場合も。駅弁参入から4年後の19年に常磐線・いわき駅の駅弁業者として大会に参戦した「小名浜美食ホテル」は、京王百貨店の駅弁大会で爆発的に知名度を上げたことで知られている。
同社の看板商品「うに貝焼き食べくらべ弁当」は、初出店の際は、最終的には不動の1位「いかめし」(2.3万個)、2位の「牛肉どまん中」(1.4万個)に次ぐ「1.3万個」の販売個数を記録したという(2018.3.13 朝日新聞東京地方版による。現在は販売個数非公開)。
チラシでもそこまで大きい扱いではなかったにもかかわらず、SNSでは初日から「初めて存在を知ったけど、おいしかった!」という声が挙がり、数日後の開店前の行列では「いわきの駅弁が人気らしい。早く並ばないと!」と列に並ぶ常連客のつぶやきが、行列の後ろの方にさざ波のように広がるという光景が見受けられた。なお、筆者は京王の駅弁大会に十数年連続で参戦しているが、開店前にここまで強烈に拡散される現場は、見たことがない。
京王百貨店の駅弁大会は、その開催規模・知名度ゆえに、実力のある駅弁業者が桁外れの“大バズり”を起こすことができるのだ。地元・いわき市でお店の方にお話を伺っても、「駅弁大会で存在を知って、食べに来た」という方が相当数いらっしゃったそうだ。地元で駅弁を販売するだけでは、こういった波及効果はなかなか得られないだろう。
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