「バブル超え」なるか 日経平均“34年ぶり高値”を市場が歓迎できないワケ古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)

» 2024年01月12日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
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株高、企業はどう活用すべき?

 株価が歴史的高値に達した際、企業が行うと良いことは大きく分けて2つある。まずは増資や融資による資金調達だ。通常、企業価値が高く評価される際に新株発行や公募増資を行うことで、企業は第三者に株式をそれほど放出せずに資本を増やし、将来の投資や負債返済に利用できる。

photo (提供:ゲッティイメージズ)

 また、戦略的投資やM&Aも株高の局面で行われるケースが一般的だ。株価やPERが高い時には、市場関係者は高い成長率をより期待するようになるため、市場シェアの拡大を図らなければならないという課題感もつきまとう。その結果、株式交換や債券を使った企業買収を行うことで、効率的に業績を拡大し、非連続的な業績の拡大方針が経営の意思決定の場で取られる可能性が高くなる。

 しかし、自社の株価や企業価値が増加した要因が、自社の業績が特別に優れていることではないのならば、株高という局面は足をすくわれやすい罠にも満ちていることに注意しなければならない。金融政策や外国人投資家による割安感という、市場全体のテーマによる企業価値の押し上げは、M&A戦略における潜在的なリスクを高めてしまうことにも気を配っておく必要がある。

 なぜなら、企業が自社の株価が全体的な要因で高く評価されているのであれば、買収先の業績や企業価値も同様に過大評価されている可能性があるからだ。これは、M&A後に想定よりも低いパフォーマンスを示し、減損リスクを増大させる要因となり得る。

 従って、経営者は「高い成長率が期待されている」という現状と「持続可能な成長率」を区別して考え、あくまで現実的な見積もりに基づいて慎重な経営判断を行うことが肝要だ。持続可能な成長率を念頭におけば、株価やPERの過熱感も縮小し、同時に株価も下がる可能性はある。しかし、高値でさらに攻めた経営を行えば、企業そのものの存続が厳しくなることも考えられる。

 現在の金融環境下では増資や資金調達に有利に働くことは確かであるが、そうだからこそ、「買収ありき、投資ありき」による短期的な業績向上ではなく、長期的な企業価値の向上に焦点を当てた経営方針の策定が求められてくるのだ。

筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO

1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら


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