日経平均株価が3万5000円に達し、バブル経済後の最高値を連続で更新し続けている。1ドル140円台の歴史的な円安は、外国人投資家を中心に日本株の割安感を印象付けるだけでなく、輸出セクターを中心とした海外売上高比率の高い企業の業績を押し上げた。
1989年12月29日に付けた日経平均株価の史上最高値「3万8957円44銭」超えも射程圏内に入ってきたが、ここまで株価が高くなっている点について懸念の声も小さくない。
特に、市場関係者の間で懸念されている要因といえば、日本銀行による利上げと、米国の連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測だろう。コロナ禍以来、世界の中央銀行は、過大なインフレと戦うために自国通貨高を招く利上げ政策を断行した。
その一方で、顕著なインフレが見られなかった日本においては、自国通貨安を招く低金利政策を堅持したのである。つまり、コロナ禍以降の金融政策は、外貨高と円安をもたらす金融政策が同時に進行するという歴史的にもまれな環境であったといえ、その副産物として歴史的な円安がもたらされたのだ。
そして直近では、日銀の利上げと海外中央銀行の利下げ、つまりこれまでと正反対の金融政策環境に移行する可能性があり、円高ドル安への”逆回転”が懸念事項となっているわけだ。
とはいえ、単純に3万5000円という数字の比較だけで今が「バブル」と断定するのは早計である。そもそも、日経平均株価指数については、構成企業の配当金を含めた「日経平均トータルリターン・インデックス」によれば、4年前の時点で史上最高値を超えており、現在は61486.11ポイントで推移している。バブルの頂点で日本株を買ってしまい、損切りができなかった投資家も、配当金を加味すれば単純計算で元本の1.5倍になっている計算になるというわけだ。
では、日経平均から見て現在はバブルの状態にあるのだろうか。この点について、1989年と2024年の株式市場は、時代背景や株価バリュエーションにおいて大きく異なる点に注意したい。
日本のバブル経済時代のピーク時、1989年末の日経平均株価のPER(株価収益率)は非常に高く、約70倍に達していた。これは、当時の株式市場が非常に過熱していたことを示しており、投資家は当時の企業の価値を、年間利益の70倍で評価していたことによる。
その一方で、24年の日経平均のPERは、バブル崩壊後の最高値を更新した水準を持ってしても、いまだ「適正水準」とされる14〜16倍程度で推移している。この数値は、株価が比較的実体経済の基本的な指標に沿って動いていることを示しており、米国市場などと比較しても遜色ない数値だ。つまり、現在の株式市場はバブル時代のような極端な過熱は見られず、より健全な市場評価を反映しているといえるだろう。
仮に、今の日経平均株価がバブル時代と同じPER70倍の水準に達するためには、日経平均株価は15万3125円になる必要がある。今の株価がバブルと同じであると危機感を感じるのは、日経平均株価が少なくとも10万円を超えてからでも遅くはないということだ。
また、外国人投資家が重視する「ドル建て日経平均株価」でみれば、直近の株高も円安によるものが大きい様子がうかがえる。ドル建て日経平均は240.8ドルで、これは円安が本格化する前の21年の279ドルと比較して14%ほど低い数値だ。
この観点からみると、現在の日経平均株価が過去最高値を更新したという事実は、円の価値の低下と相対的な国際的な経済環境の変化を反映している可能性がある。そのため、円建てでの株価上昇が必ずしも実質的な経済の強さを示しているわけではなく、現在の日経平均の「最高値」は、一面的なものにすぎないとも考えられる。
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