「値下げで過去最高益」のイオンが、賃金を上げなければ非常にマズいワケスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2024年01月17日 10時14分 公開
[窪田順生ITmedia]

日本人がこれまで以上に貧しくなる

 原料費やガソリンが高騰していく中で、仕入れや輸送コストの圧縮はすぐに限界がくる。光熱費や宣伝・販売促進費の見直しや節約も同様だ。となると後に残る固定費は、人件費しかないのは自明の理だ。

 といっても、スーパーや量販店もパートやアルバイトがいなくてはまわらない。セルフレジなどの機械化や効率化を進めて、シフトの数を減らすにしてもある程度いけば限界がくる。そうなると「持たざる者」である中堅地方企業としては「これ以上、賃金を上げない」という消耗戦に突入するしかない。

 日本全国にあるイオンが「値上げラッシュの中、値下げで庶民をバックアップ」という戦略を続ければ続けるほど、イオン以下のプレイヤーの賃金は低いままなので、世の中には低賃金労働者であふれかえる。

「低賃金」の連鎖に……(画像はイメージ、出典:ゲッティイメージズより)

 これは日本経済的には最悪である。「低賃金労働者」というのは「購買力の弱い消費者」だ。つまり、この厳しい値上げラッシュの中で生きるために、「安い食事、安い服、安いサービス」を支持する大量の消費者が出現することを意味する。

 こうして社会に「安さ=正義」というムードが広まれば、企業側も「さらに安く、もっと安く」という事業戦略に傾倒していく。最初は正攻法のコストカットをしていくが、それでも安さが実現できなくなれば先ほどと同じく「人件費」へと手を付ける。かくして、あらゆる業界・業種が「低賃金の蟻地獄」にはまって、日本人はこれまで以上に貧しくなっていく――というワケだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.