さて、そこで気になるのは、「ではイオンはどうすりゃいいのか」ということだが、実は答えは簡単だ。「スケールメリットを生かして庶民のために値下げ」をするのも結構だが、それで出た利益を「全国のイオンで働く人々の賃金」へと還元するのだ。
といっても昨年末に『読売新聞』で報道された「現在のパート従業員の平均時給1070円から75円ほど引き上げる」みたいなみみっちい話ではない。コストコの「全国一律時給1500円」やイケアの「全国一律時給1300円から」が話題になったが、このようなことを全国のイオングループでも実施するのだ。
日本を代表する「流通の巨人」なのだから、「全国一律時給1400円から」くらいがいいのではないか。
ご存じのように、日本の地方経済が衰退している原因の1つは、賃金の地域格差が大きいことだ。東京や大阪などの大都市圏と地方の最低賃金には大きな開きがある。ということで、少しでも多くの賃金を得たい若者は学校を卒業すると故郷を捨てて都会へ向かう。結果、地方は労働者も消費者も減っていくという悪循環がずっと続いている。
この問題を解決するために、「最低賃金を全国一律にすべき」という意見がある。元ゴールドマンサックスのアナリストで、現在は小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏が寄稿した『最低賃金を絶対「全国一律」にすべき根本理由』(東洋経済オンライン 19年2月8日)によれば、世界では全国一律の最低賃金が主流であり、13年時点で日本のように地域別で最低賃金を設定しているのは、カナダ、中国、インドネシアだけだったという。
そんな「世界の常識」を踏まえて、賃金の地域格差をなくしていくにどうすべきか。こういう国なのでいきなり「最低賃金の全国一律」導入は難しい。となると、まずはコストコやイケアのような「全国一律の高待遇」を進めていくしかない。その動きを全国に拠点があるイオングループが後押しをするのだ。
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