元日に石川県能登地方を襲った最大震度7の大地震は、能登半島を中心に深刻な被害をもたらした。
本稿執筆時点である1月10日現在、石川県内だけで200人以上が死亡し、重軽傷者600人弱、安否不明者52人、約2万6000人が避難中という状況だ。少なくとも1825棟の建物に被害が確認され、県内に存在する漁港の7割にも及ぶ50の漁港で防波堤や岸壁に被害が出ている。
まずは今般の地震により、被害を受けられた地域の皆様に謹んでお見舞い申し上げる。また、政府や自治体、自衛隊や消防、インフラ関連に従事される皆さま方におかれても、元日からの迅速な災害対策にあたって感謝しかない。1日も早い復興と皆さまのご安全を心より祈念している。
政府の対応を「遅い」と批判する意見が散見されるが、過去実家で阪神大震災を経験し、出張先の岩手県で東日本大震災に遭遇して避難所生活を送ったこともある筆者の肌感覚としては、現政府の対応は迅速どころか「爆速」といってよいだろう。
能登半島地震の当日、午後4時10分に震度7の揺れを記録してすぐ、1分後には総理官邸に対策室が設置された。5分後には被害状況把握、被害防止措置徹底、救命救助に全力で取り組む旨の総理指示を出している。20分後には自衛隊による航空偵察が行われ、35分後には石川県馳知事より自衛隊への災害派遣要請。約1時間後には岸田総理と馳知事が官邸入りし、2時間後には消防庁より複数の都道府県と市に対して出動指示が出ている。
翌1月2日以降は未明より、出動要請があった各地の消防局が続々現地入りするとともに、救助活動も開始。自衛隊も人員輸送、重機輸送、給水支援、道路啓開、救助活動を開始。DMAT(災害派遣医療チーム)の一次隊も活動を開始している。1年のうち最も休む人が多い元日の発災であることを考えると、この対応は充分迅速といえるだろう。その後の対応状況は、首相官邸、防衛省、消防庁など各所のWebサイトにて続報が出されている。
復旧の進捗状況については他のメディアにおいて現在進行形で報道されているので、本稿では視点を少し変え、迅速な災害対応を可能としている「卓越した現場力」と、それをあたかも当たり前のように享受してしまっている「お客様マインド」の危険性、そして日本のGDPはなぜ低いのか、どうしたら上げられるのかについて考察していきたい。
能登半島では依然として断水や停電が続いており、早期の復旧目処は立っていない状況だ。しかしあまり着目されていないところだが、今般の地震と、2日に羽田空港で発生した日本航空と海上保安庁の航空機が衝突した事故において、半島部以外の主要交通網における復旧作業が信じられないレベルの迅速さで完了したことは特筆すべきだろう。時系列で追っていくと、次の通りだ。
繰り返すが、1年でもっとも多くの人が休んでいるであろう元日に発生した被害が、わずか数日のうちに復旧しているなど、普段から有事に備えた体制を維持できている賜物であろう。迅速な復旧を可能とした現場の皆さまの尽力には感謝しかない。
また、企業の対応についても言及したい。国からの要請を受けて、山崎製パン、敷島製パン、フジパンの3社が急遽被災地への食糧支援に対応。もともと出荷予定だった分に加えて追加生産も行い、菓子パンや総菜パンを中心に、3日時点で計11万5000食を被災地に届けている。その他、日清食品ホールディングスやエースコックがカップ麺を、日本コカ・コーラやサントリーHDなどが水を、ユニ・チャームが生理用品やおむつを届けたことも報道された。
しかし、これほどまでに献身的に災害対応をする国や関連各所に対して、一部メディアやSNS上では「対応が(過去の災害と比べて)遅い、小規模だ」「首相が新年会に出席したり、休んだりしている」「被災地に物資を提供した企業がお金を取っている」などといった苦言が呈されているようだ。
災害に直面し、不安になったり焦ってしまったりする気持ちは重々分かるのだが、このような見当違いの「お客様マインド」こそ、わが国の労働環境をブラック化させてしまっている根本的な原因ではないかと危惧している。それぞれに対して筆者の見解を述べていきたい。
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