長らく業績悪化に直面していたサンリオが、V字回復を見せている。7期続いた減収減益が2022年3月期にストップすると、翌23年3月期には営業利益が前期比4倍超に成長。直近の24年3月期第1四半期決算でも好調を維持し、かつて2000円台を割っていた株価は8月17日時点で8065円に達した。
V字回復の立役者は、20年7月に社長へ就任した辻朋邦氏だ。辻氏は社長に就任した翌年、22〜24年度が対象の中期経営計画を発表。組織の課題として「頑張っても報われない組織風土」「挑戦が称賛される社風でない」といった点を掲げ、改革に取り組んだ。
今回の企画では、辻社長へのインタビューを前編と後編に分け、サンリオが行った改革を解説していく。後編となる本記事では風土改革にフォーカスする(記事前編はこちら)。
辻社長が21年に発表した中期経営計画は、23年度で最終年度を迎える。当時、計画を立てるに当たって意識したのが組織風土の一新だ。14年度から減収減益が続き、コロナ禍で赤字転落したことへの焦りがあった。
まず取り組んだのが社員アンケートだ。辻社長は「まずは社員の意見を聞かなければいけないと考えていました。経営が独りよがりの改革をぶち上げても、現場はついてきてくれません」と話す。
そこで浮き彫りになったのが、4つの課題だった。
1つ目は、中期経営計画にも書かれた「挑戦を称賛されない風土」。歴史があり、成功を収め続けてきた企業だからこそ、これまでやっていなかったことへの反発や圧力があり、「頑張った者負け」のような状態になっていた。時代の変化が激しい昨今、新たな挑戦が生まれない風土に大きな危機感を抱いたという。
2つ目の課題が、数字を基にした論理的な議論がなされていない点だ。特に経営レベルの会議が少なく、KPIやKGIの設定もなされないまま、マーケティングを中心に経営戦略が定め切れていなかった。現場への指示もあいまいになることで成長軌道を描けずにいたという。
3つ目が、従業員の評価や人事制度が硬直化してしまっていたこと。大きな変革やチャレンジを成し遂げる上では社員のモチベーション向上がポイントだが、そうした仕組みを整備できていなかった。
最後に、企業理念に共感する社員が多い一方で、体現しながら利益を生み出せていると感じる人が少なかった点も挙がった。
「ある種、企業理念に甘えてしまっている現状がありました。当社は『みんななかよく』という企業理念を掲げていますが、営利企業として活動する以上、仲良くできていても利益がついてこなければいけません。多くの人を笑顔にして、利益を出す。そして、理念を実現する。そうしたサイクルになっていなかったことにはとても危機感を持ちました。そこで、社員が理念を体現しながら組織としても成長していけるように、新たにビジョン・ミッション・バリューを設定しました」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング