長らく業績悪化に直面していたサンリオが、V字回復を見せている。
2015年3月期から21年3月期まで、7期続いた減収減益が22年3月期にストップすると、翌23年3月期には営業利益が前期比4倍超となる132億円に成長。直近で発表した24年3月期第1四半期決算でも、営業利益が前期比150.2%の59億円と好調を維持している。2000円台を割っていた株価も、8月には8000円台を記録した。
同社がここまで急激に復活を果たした背景には、20年7月に社長へ就任した辻朋邦氏が主導した組織改革がある。
辻氏は社長に就任した翌年、22〜24年度を対象とした中期経営計画を発表。「痛切な反省」の下で、第2の創業という覚悟を持って定めた計画には、組織の課題として「頑張っても報われない組織風土」「挑戦が称賛される社風でない」といった厳しい言葉が目立った。辻社長は次のように振り返る。
「『みんななかよく』という企業理念の下で、ハローキティを中心としたキャラクターを生み出し、『Kawaii』という文化を形成してきたのは当社の素晴らしい功績です。一方で、キャラクターのブランディングや組織制度などが硬直化してしまい、自社の資産を生かし切れていない点に課題を感じていました」
14年に入社して経理や営業として活動する中で、自社が抱える数多くの課題を感じてきた辻社長は、どのように改革を推し進めてきたのか。
サンリオが有する多彩なキャラクターの代表格がハローキティだ。国内外で幅広い人気を博すキャラクターで、24年に50周年を迎える。辻社長が入社した当時も海外を中心に売り上げが非常に伸びていたという。一方で、ハローキティに依存する体制が課題でもあった。
「私が入社した当時から、売り上げの多くをハローキティ関連が占めていました。海外の富裕層を中心にグローバルでも人気を博していた点はとても素晴らしいことです。しかし、ハローキティに続いてグローバルで勝負できるキャラクターがなかなか出なかった点は課題でした。また、当時はマーケティング専任の組織がなかったことから、長期的な視点でキャラクターを育てていく施策を打てなかった点も改善すべきだと考えました」
キャラクターの人気が高いことから、ライセンシーからの引き合いも多く、営業もしやすい。しかし、キャラクターの背景となるストーリー性や長期的なブランディング戦略が定まっていなかったことで、ビジネスの展開が頭打ちになっていたという。
そして、マーケティング専任の組織体がないという社内的な課題だけでなく、社外にも対応すべき変化が起こっていた。
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