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サンリオ驚異のV字回復 いかにして「ハローキティ依存」を脱したのか辻社長インタビュー【前編】(2/3 ページ)

» 2023年09月12日 07時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

これまでの「刷り込み」だけでは、もう戦えない

 昨今はエンターテインメントのタッチポイントが非常に多様化している。ハローキティが人気を獲得してきた勝ちパターンが通用しなくなる中で、新たな手法への転換も必要だった。

 「ハローキティを中心に、当社のキャラクターにとっての勝ちパターンは『刷り込み』でした。新たなキャラクターが生まれたら、商品化して手に取っていただき、知っていただく。弁当箱や財布、ポーチといったアイテムを展開して、生活に深く入り込んで思い出になっていくことで、認知や熱量を高めてきました。しかし、最近はテレビやゲームだけでなく、さまざまなコンテンツが世の中にあふれています。もはや商品を大量に出して、刷り込みながら人気を獲得できる時代ではなくなりました」

 そこで、これまでなかったマーケティング部署を新設。プロダクトアウトから、マーケットインへと徐々に軸足を移していく。

 「キャラクターのブランドを高めてグローバルで戦っていくためには、名前も重要な要素です。しかしながら、これまでのキャラクターには海外だと発音しにくいような名前もあります。そもそもキャラクターを考えるときに、グローバルの視点や市場の観点が抜け落ちてしまっていました。『女児向け商品の売り上げが悪いから、女児向けのキャラクターを作ろう』といった形で、場当たり的に考案することもありました」

辻朋邦社長

 マーケティング部署を設立してからは、しっかりとキャラクターのポートフォリオを作成し、長期的な観点でブランディング施策を検討できるようになっていった。

 中期経営計画で掲げた「組織風土改革」も功を奏した。従来は個別最適/サイロ化していた各組織の壁を壊し、流動性を高めることでキャラクターの名前やデザイン、世界観からプロモーションの方法までを、部門横断的に検討できるようになった。

 「ライセンスの取り引きを一つ取っても、これまでは部署内でとどまっていたところがマーケティング部署と一緒に行動して収益を拡大することが増えました。部内での連携も活発化しており、全社横断的なイベントでも成果が出ています」

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