社員アンケートで見えた4つの課題を基に、中期経営計画を定めて組織改革に乗り出した辻社長。経営レベルでは月3回の経営会議を新設した。
「部長クラス以上での議論が活発になったことで、さまざまな課題が見えてきました。プロジェクトの進ちょくを追えるようになったことで、よりタイムリーな施策を打てるようになった点は大きな成果です」
その他、特に意識したのが、反発を事前に防ぎながら現場のモチベーションを高めて改革を進めることだ。取締役や執行役員の若返りを掲げ、外部からの人材を多く登用する中で、プロパー社員も安心・納得できるようにコミュニケーションの機会を増やした。
「数多くの改革をするので、当然現場の業務量も多くなります。これまでにないチャレンジも増えるので、現場のモチベーションを高めないことには話が始まりません。また、社員の一人ひとりが自分ごととして改革を進める必要もあります。そこで、社長対話として社員4人1組とコミュニケーションする機会を設けるなど、情報を徹底的に共有し続けました」
コロナ禍での社長就任ということもあって、外部への挨拶回りする機会が少なかったことも功を奏した。自身のリソースを社内に集中することができたので、1年半ほどをかけてみっちり社員との対話を行った。
社長対話は社員を20代から60代の年齢ごとに分けて実施。中でも印象に残っているのが、中堅〜ベテラン層との対話だという。
「中堅どころの社員は、新たな外部人材を多く採用することに不安を抱える傾向にありました。これまで自分がやってきたことやポジションが奪われるかもしれないと思うのは、当たり前の感覚です。しかし、経営陣としてそうした『入れ替え』は意図していません。このことは強調しました」
説明の際、野球に例えて話した。社員全員が素晴らしい選手である一方、スラッガーばかりの状況だと伝えた。試合に勝つためにスラッガーは必要不可欠だが、1番から9番まで全員がスラッガーでは勝負にならない。守備が上手な人や足の速い選手、はたまた変化球を投げ分けられるなど、多彩な能力を持つ選手がそろっていてこそチームは強くなる。そうした多様性を取り入れ、さらに組織をよくするのが外部人材を登用する目的だと伝えたところ、大きく納得してもらえたという。
「ベテラン社員との対話も非常に印象深いものでした。それまでは、社内の経験が長ければ長いほど、変化や改革へのハードルが高いのではないかと考えていましたが、実際は全く違ったのです。むしろ皆さんが前向きに改革の話をしてくださり、残りの会社員人生を賭けます、といった意気込みの人も多かったことには驚きました」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング