支えるのが、NTTが30年の実用化を目指す光技術を使った次世代通信構想「IOWN(アイオン)」。25年大阪・関西万博で初めて本格的に世に問う「未来のコミュニケーション技術」だ。
これまでの通信ネットワークでは映像や音声を送るとき一度圧縮するため、数秒、遅れる。しかしアイオンの回線は、映像や音声を圧縮せず光信号に乗せるため超高速で膨大な量のデータを素早く送れる。遅延は従来の回線の200分の1だ。
オーストリアのコンサートでは、アイオンで実用化を目指す「デジタルツインコンピューティング」を使った。この技術によって、現実世界に存在する武藤さんが「ツイン=双子」のように仮想空間に再現された。
3カ月後の12月中旬、東京・渋谷でも、アイオンの一端が披露された。
「すごい、まったくいつもと同じ。モニター越しということを忘れるぐらい」。人気の女性お笑いコンビ「ヨネダ2000」の誠さんがステージで驚きの声を上げた。
複合施設「渋谷サクラステージ」でのイベント。誠さんは会場、相方の愛さんは遠隔地からモニターで出演し、人気のリズムネタ「餅つき」を披露した。
愛さんが繰り返す「ぺったんこ」のリズムに誠さんが掛け声を入れる。遅れが一瞬でも生じれば成立しなくなる難しいネタ。しかし、声を出すタイミングや動きの絶妙な間はぴったりと合い、会場は沸いた。
遅れが生まれず、2人が同じ場所で実際に向き合っているかのようなコミュニケーションとなったのも、アイオンの技術を一部使ったためだ。
アイオンは、遠い場所にいる人が、まるで体ごと隣に移動してきたかのようなコミュニケーションを可能にする。「触覚や嗅覚など『五感』を通信で伝えられるようにしたい」とするNTTの島田明社長は、こう語る。
「万博出展の意義は『未来』を次世代の人にしっかり見てもらうこと。『未来』を見た経験を通じて夢を持ち、実現してほしい」
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