9200キロ先にアバター 2025年、見たことない世界示せるか(3/4 ページ)

» 2024年01月21日 09時00分 公開
[産経新聞]
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1970年の夢の技術 スマホで結実

 「未来のコミュニケーション技術」は1970年大阪万博にも登場した。「電気通信館」。NTTの前身・日本電信電話公社(電電公社)が出展したパビリオンだ。来場客を驚かせたのが、世界初の携帯電話「ワイヤレステレホン」だった。

 同社はそれまで無線通話システムの開発を続けていた。万博に向け重さ660グラムまで小型化。約400平方メートルの部屋に約100カ所のブースを置き座って使えるようにした。端末が出す電波はアンテナや交換機を通じ、全国の電話網につなげられた。

 来場客は無料で1人約30分、通話可能。電話機を持ち運んでどこからでもかけられる便利な未来社会を思い浮かべなから、会期中、延べ約60万人が楽しんだ。

 当時、インフラ整備や端末に搭載する電池の開発はハードルが高かった。だが、同社の研究者らは「必ず無線通信が注目される時代が来る」と信じ続けた。実際、その後PHSや携帯電話、スマートフォンが開発・実用化され、爆発的に普及する。万博が未来社会のニーズを的確に予測した。

 70年万博にはテレビ電話も登場。会場内をつないで迷子と親が双方向で顔を確認することなどに使われた。映像と音声で通話する技術はその後、スマホやビデオ会議システムで実用化した。

 そして2025年大阪・関西万博。NTTグループはパビリオンで、光技術を使う次世代通信構想「IOWN(アイオン)」が作る未来社会のコミュニケーションを示す。詳細は検討中だが、NTTの吉川勲大阪・関西万博担当統括部長は次のように説明する。

 パビリオンは複数の建物で構成。来場客は最初の建物で身体をスキャンされ、さまざまな生体データが取得される。

 次の建物に進むと「別の場所にある空間」がアイオンにより再現されている。圧倒的な立体感と臨場感。匂いや触覚も感じられ、体ごと移動した感覚にとらわれる。膨大なデータを瞬時に送れるアイオンだからこそ可能な体験だ。

 さらに同じ「空間」の目の前では、スキャンされたデータから再現された立体的な自分のアバター(分身)が自分の意思とは無関係に動き回る。「私にはこんなことができる能力があったのか」との気づきを得られるという。

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