“クルマ”が空を行き交う世界は実現するのか 人類の願いに際限はない(4/4 ページ)

» 2024年01月23日 09時23分 公開
[産経新聞]
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実用化には意識改革も

 昨年12月、大阪府八尾市の商業施設で、空飛ぶクルマの実機の展示やVR(仮想現実)機器を使った飛行体験を実施。多くの市民が詰めかけ関心の広がりがうかがえた。

 だが、万博を機にどこまで実用化するかには課題も多い。

 万博での運航事業者4グループの1つ、丸紅は万博にあわせての商用運航を断念し、操縦者のみで客を乗せない「デモ飛行」とすることを決めた。空飛ぶクルマは航空法の規制対象で、商用化の前提となる量産には機体の安全を担保する「型式証明」を取得しなければならないが、技術確立が間に合わないためだ。

 開発中の充電設備についても、空飛ぶクルマは機体の統一規格がまだないため、個別の機体とのすり合わせが必要。重すぎず航続距離を稼げる電池の開発も不可欠だ。

 人々の“意識改革”も求められる。八尾市で実機を展示した開発メーカー、テトラ・アビエーションの新井秀美取締役はこう指摘する。

 「普及には、頭上の低い高度を飛ぶことを市民が受け入れる『社会受容性』が課題となる」

 パナソニックホールディングスの宮部義幸副社長は、中学生のとき1970年万博の会場で見たワイヤレステレホンに衝撃を受け、職業の選び方が左右された。

 宮部氏は未来の乗り物の展望をこう語る。

 「万博は未来への大きなビジョンを示し、その方向へ切磋琢磨(せっさたくま)していくきっかけを得る場。実現に向かって社会が動いていくことが大切だ」

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